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updated_at: 2026/4/12

エンジニア採用の法務知識ガイド|労働契約・競業避止・知財の実務

エンジニア採用で押さえるべき法務知識を解説。労働契約・競業避止・知財・副業規定の実務ポイント

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エンジニア採用の法務知識ガイド|労働契約・競業避止・知財の実務

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「内定を出したのに、労働条件の記載不備でトラブルになった」「退職したエンジニアが競合に転職して、社内のノウハウが流出した」——こうした法務リスクは、エンジニア採用で意外と見落とされがちです。

エンジニアの採用プロセスは、スカウト・面接・オファーといった「人を口説く」フェーズに注目が集まりがちですが、その裏側には労働契約・知的財産権・競業避止義務・副業規定など、法務面で押さえるべきポイントが数多くあります。

特にスタートアップや成長企業では、法務担当がいない(または兼務)ケースも多く、採用担当者自身が最低限の法務知識を持っておく必要があります。

本記事では、エンジニア採用に関わる法務知識を、採用担当者・人事が実務で使えるレベルで整理しました。

このページでわかること:

  • エンジニア採用で必要な労働条件通知書・オファーレターの書き方

  • 競業避止義務の設計方法と有効性の判断基準

  • エンジニアが作ったコード・発明の権利帰属ルール

  • 副業・兼業の規定設計と実務対応

  • 秘密保持契約(NDA)のポイント

  • 試用期間の法的な注意点

TL;DR(この記事の要約)

  • 労働条件通知書は2024年4月改正で記載事項が追加された。就業場所・業務の「変更の範囲」の明示が必須

  • 競業避止義務はエンジニアに対して広範に課すと無効になりやすい。期間・範囲・代償措置の3点を絞ること

  • 職務著作のコードは原則として会社に帰属するが、職務発明(特許)は規程がなければ発明者個人に帰属する

  • 副業・兼業は原則認める方向が主流。届出制にして、競業・秘密漏洩リスクだけ管理するのが現実的

  • 秘密保持契約は入社時だけでなく退職時にも改めて締結・確認するのが望ましい

  • 法務の整備は「リスク回避」だけでなく、候補者からの信頼獲得にもつながる

1. 労働条件通知書・オファーレターの正しい作り方

なぜエンジニア採用で特に重要なのか

エンジニアは転職時に複数のオファーを比較検討するのが一般的です。曖昧な条件提示はそれだけで候補者の不信感につながり、辞退リスクを高めます。

また、エンジニアは細部に目を通す傾向が強く、契約書の不備や矛盾に気づきやすい職種でもあります。法的に正確で、かつ候補者にとってわかりやすい条件提示が求められます。

労働条件通知書の必須記載事項(2024年4月改正対応)

労働基準法第15条により、使用者は労働契約の締結時に労働条件を明示する義務があります。2024年4月の改正で、以下の項目が新たに追加されました。

従来からの必須記載事項:

  • 契約期間

  • 就業場所・従事すべき業務

  • 始業・終業時刻、休憩、休日

  • 賃金の決定・計算・支払方法

  • 退職に関する事項(解雇事由を含む)

2024年4月から追加された記載事項:

  • 就業場所・業務の変更の範囲

  • 有期契約の場合、更新上限の有無と内容

  • 無期転換申込権が発生する場合の転換後の労働条件

エンジニア採用で特に注意すべきは**「就業場所の変更の範囲」**です。リモートワークを前提に入社したのに、後から出社を求められた——というトラブルを防ぐために、リモート勤務の条件を明確に記載しておきましょう。

オファーレターと労働条件通知書の違い

項目

オファーレター

労働条件通知書

法的根拠

なし(慣行)

労働基準法第15条

交付タイミング

内定時

労働契約締結時

法的義務

なし

あり

記載内容

自由

法定の必須項目あり

実務上は、オファーレターに労働条件通知書の必須事項をすべて含めて一体化する方法が効率的です。これにより、候補者への条件提示と法的義務の履行を同時に完了できます。オファー面談の具体的な進め方についてはエンジニア採用のオファー面談完全ガイドで詳しく解説しています。

エンジニア向けオファーレターに含めるべき追加項目

法定の必須事項に加えて、エンジニア採用では以下の項目を明示すると候補者の意思決定を後押しできます。

  • 使用する技術スタック(言語・フレームワーク・インフラ)

  • 開発チームの構成(チーム規模・レポートライン)

  • リモートワークの可否と条件(フルリモート/ハイブリッド/頻度)

  • 副業の可否

  • ストックオプション・RSUの条件(スタートアップの場合)

  • 技術書購入費・カンファレンス参加費などの補助制度

  • 試用期間中の条件(本採用と異なる場合)

報酬設計の考え方やトータルリワードの設計については、エンジニア採用で勝つための報酬設計と年収戦略の完全ガイドも参考にしてください。

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2. 競業避止義務の設計と運用

エンジニアの競業避止義務はなぜ難しいのか

エンジニアの持つスキル——プログラミング言語、設計パターン、開発手法——はほとんどが汎用的なスキルです。そのため、「同業他社への転職を禁止する」という広範な制限は、職業選択の自由(憲法第22条)を不当に制限するとして無効と判断されるケースが多くあります。

一方で、自社固有のアルゴリズムや顧客データへのアクセスがあったエンジニアについては、一定の競業避止義務を課すことに合理性が認められることもあります。

競業避止義務の有効性を判断する6つの基準

経済産業省の「競業避止義務契約の有効性について」や裁判例を踏まえると、有効性は以下の6つの要素で総合的に判断されます。

  1. 守るべき企業の利益があるか - 営業秘密、独自技術、顧客情報など

  2. 従業員の地位 - 機密情報にアクセスできる立場だったか

  3. 地域的な限定 - 無制限は不利に判断される

  4. 期間の限定 - 一般的に1年以内が妥当とされる傾向

  5. 禁止行為の範囲 - 具体的かつ限定的であること

  6. 代償措置の有無 - 退職金の上乗せ、一定期間の手当など

エンジニア向け競業避止義務のベストプラクティス

推奨する設計方針:

  • 対象者を限定する: 全エンジニアではなく、CTOやテックリードなど機密性の高い情報にアクセスする役職に絞る

  • 期間は6ヶ月〜1年以内: IT業界では技術の陳腐化が早いため、長期間の制限は無効リスクが高い

  • 禁止行為を具体化する: 「同業他社への転職禁止」ではなく、「自社と直接競合する○○分野の製品開発への従事を禁止」のように具体的に記載

  • 代償措置を用意する: 退職時の特別手当、コンサルティング契約への切り替えなど

避けるべきパターン:

  • 全従業員に一律で2年間の競業避止義務を課す

  • 代償措置なしで広範な競業避止を要求する

  • 「IT業界全般」のような曖昧な範囲設定

退職時の対応フロー

  1. 退職面談で競業避止義務の内容を再確認する

  2. 義務の範囲と期間を書面で明確化する

  3. 必要に応じて代償措置の条件を提示する

  4. 秘密保持義務との区別を明確にする(後述)

3. 知的財産権の帰属ルール

コード(著作権)は誰のものか

エンジニアが業務で書いたコードの著作権は、**著作権法第15条の「職務著作」**に該当する場合、原則として会社に帰属します。

職務著作が成立する要件は以下の3つです。

  1. 法人等の発意に基づいて作成されたこと

  2. 法人等の業務に従事する者が作成したこと

  3. 法人等の名義で公表されるものであること(プログラムの著作物は名義要件不要)

プログラムの著作物については名義要件が不要なため、業務命令で開発したコードは基本的に会社に著作権が帰属します。ただし、契約で別段の定めがある場合はその契約が優先されます。

業務委託エンジニアの場合は要注意

フリーランスや業務委託のエンジニアに開発を依頼した場合、職務著作は成立しません。つまり、著作権は原則として開発者個人(または開発会社)に帰属します。業務委託エンジニアの活用戦略全般については副業・業務委託エンジニアの活用で採用力を強化する完全ガイドで詳しく解説しています。

この場合、業務委託契約で著作権の譲渡を明記しておく必要があります。具体的には以下の条項が必要です。

  • 著作権(著作権法第27条・第28条の権利を含む)の譲渡

  • 著作者人格権の不行使

発明(特許権)は別ルール

著作権とは異なり、特許法における職務発明は原則として発明者個人に権利が帰属します(特許法第35条)。

ただし、2015年の法改正により、職務発明規程を整備していれば、発明時から会社に特許を受ける権利を帰属させることが可能になりました。

職務発明規程で定めるべき主な内容は以下のとおりです。

  • 職務発明の定義と届出手続き

  • 権利の帰属(会社帰属の旨)

  • 相当の利益の支払い基準(出願報奨・登録報奨・実績報奨など)

  • 従業者との協議の手続き

スタートアップが最低限やるべきこと

  1. 雇用契約書に「業務上の著作物の著作権は会社に帰属する」旨を明記

  2. 職務発明規程を策定し、従業員に周知する

  3. 業務委託契約には著作権譲渡条項を必ず含める

  4. OSSライセンスのコンプライアンス体制を整備する

OSSライセンスと採用の関係

エンジニアの中には、OSSへの貢献を重視する人も多くいます。会社のOSSポリシーが不明確だと、以下のような問題が起こり得ます。

  • 業務時間中のOSS貢献の可否が不明

  • 個人プロジェクトと業務コードの境界が曖昧

  • ライセンス違反のリスク

OSSポリシーを明文化し、採用時に説明することで、エンジニアの安心感と企業の法的リスク管理を両立できます。

4. 秘密保持契約(NDA)の設計

エンジニア採用におけるNDAの3つのタイミング

秘密保持に関する合意は、以下の3つのタイミングで必要になります。

1. 選考プロセス中(面接NDA)

技術面接でシステムアーキテクチャや技術的課題を候補者に開示する場合、選考前にNDAを締結するケースがあります。特に以下の場合に推奨されます。

  • ペアプログラミング面接で実際のコードベースを見せる場合

  • システム設計面接で本番環境の構成を説明する場合

  • 未公開プロダクトの技術詳細を説明する場合

2. 入社時(雇用契約の一部として)

雇用契約書に秘密保持条項を含めるか、別途秘密保持誓約書を締結します。以下の項目を明確にしておきましょう。

  • 秘密情報の定義: ソースコード、アルゴリズム、顧客データ、事業計画など

  • 秘密保持の義務: 在職中および退職後の義務

  • 例外規定: 公知の情報、独自に開発した情報など

  • 義務の存続期間: 退職後の期間を明記

3. 退職時(退職時誓約書)

退職時に改めて秘密保持義務を確認・合意する書面を取り交わすことで、退職後のトラブルを予防できます。特にエンジニアの場合、転職先でも類似の技術を扱う可能性が高いため、何が「秘密情報」に該当するかを具体的に確認しておくことが重要です。

秘密情報の管理体制

NDAを締結するだけでは不十分です。実効性のある秘密情報保護のためには、以下の管理体制が必要です。

  • アクセス権限の管理(Need-to-know原則)

  • リポジトリやドキュメントの機密レベル分類

  • 退職時のアカウント削除・データ返却の手順

  • 個人端末(BYOD)のセキュリティポリシー

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5. 副業・兼業の規定設計

副業解禁は採用競争力に直結する

厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(2018年策定、2022年改定)以降、副業を認める企業が増加しています。エンジニアにとって副業は、スキルアップや収入増加だけでなく、技術コミュニティへの参加手段でもあります。

副業を禁止している企業は、それだけでエンジニア採用の候補者プールが狭まるリスクがあります。

許可制と届出制の選択

方式

メリット

デメリット

許可制

個別にリスク判断できる

手続きが煩雑、心理的ハードルが高い

届出制

手続きが簡便、従業員の心理的負担が少ない

個別審査ができない

多くの企業では届出制を採用しつつ、一定の制限事項を設ける方式が主流です。

副業規定で定めるべき制限事項

副業を認める場合でも、以下のケースでは制限・禁止が認められています(厚生労働省ガイドライン準拠)。

  1. 労務提供に支障がある場合 - 本業の就業時間中の副業、過度な長時間労働

  2. 業務上の秘密が漏洩する場合 - 機密情報を扱う副業

  3. 競業に該当する場合 - 直接の競合企業での就業

  4. 企業の名誉・信用を損なう場合

エンジニアの副業で特に注意すべき点

  • 個人開発プロダクトとの境界: 業務で得た知識を個人プロダクトに活用するケースは線引きが難しい。就業時間外かつ会社のリソースを使わないことを条件にするのが一般的

  • OSSコントリビューション: OSSへの貢献は通常、副業規定の対象外として扱うのが望ましい

  • 技術顧問・アドバイザー: 競合企業の技術顧問就任は競業避止に該当する可能性がある

  • 労働時間の通算管理: 雇用契約による副業の場合、労働時間の通算が必要(労働基準法第38条)

6. 試用期間の法的な設計と運用

試用期間は「解約権留保付き労働契約」

試用期間は、法的には解約権留保付きの労働契約と解釈されます。つまり、試用期間中であっても労働契約は成立しており、「お試し期間だから自由に解雇できる」わけではありません。

試用期間中の解雇が認められるケース

三菱樹脂事件(最判昭和48年12月12日)の判例によると、試用期間中の解雇(本採用拒否)は、通常の解雇より広い範囲で認められるものの、以下の条件を満たす必要があります。

  • 客観的に合理的な理由があること

  • 社会通念上相当であること

エンジニア採用の文脈では、以下のようなケースが該当し得ます。

  • 経歴・スキルの重大な詐称が判明した場合

  • 求められる業務を遂行する能力が著しく不足している場合

  • 協調性の欠如が業務に重大な支障をもたらしている場合

試用期間の適切な設計

  • 期間: 3ヶ月が一般的。エンジニアの場合、技術力の見極めに時間がかかるため6ヶ月とする企業もある

  • 条件の明示: 試用期間中の給与・待遇が本採用と異なる場合は、労働条件通知書に明記が必須

  • 評価基準の事前共有: 本採用の判断基準を入社時に書面で共有しておく

  • 定期的なフィードバック: 1on1を通じて課題があれば早期にフィードバックし、改善機会を与える

試用期間中のミスマッチ対応

試用期間中にスキルのミスマッチが判明した場合、いきなり本採用拒否とするのではなく、以下のステップを踏むのが望ましい対応です。採用時のミスマッチを未然に防ぐ方法についてはエンジニア採用ミスマッチを防ぐ原因分析と実践的な対策ガイドも参照してください。

  1. 課題の明確化と書面での共有

  2. 改善計画(PIP:Performance Improvement Plan)の策定

  3. 十分な改善期間の設定(通常1〜2ヶ月)

  4. 改善が見られない場合の合意退職の検討

7. フリーランス新法への対応(2024年11月施行)

フリーランス・事業者間取引適正化等法の概要

2024年11月に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(通称:フリーランス新法)は、エンジニア採用にも影響があります。

業務委託エンジニアを活用する場合、以下の義務が課せられます。

発注者側の主な義務:

  • 取引条件の書面(電磁的方法を含む)での明示

  • 報酬支払期日の設定(業務完了から60日以内

  • ハラスメント対策の実施

  • 一方的な不利益変更の禁止

業務委託エンジニアとの契約で注意すべき点

  • 偽装請負のリスク: 業務委託なのに出退勤時間を管理したり、細かな指揮命令を行ったりすると偽装請負と判断される可能性がある

  • 契約書の整備: 業務内容・報酬・支払条件・知的財産権の帰属・秘密保持を明記した契約書を必ず締結する

  • インボイス制度への対応: 適格請求書発行事業者の確認と経理処理

8. 法務整備が採用力を高める理由

候補者は「契約の丁寧さ」を見ている

優秀なエンジニアほど、オファーレターや雇用契約書の内容をしっかり確認します。以下のような対応は、候補者に「この会社はちゃんとしている」という信頼感を与えます。

  • 労働条件が明確で、曖昧な点がない

  • 副業・知的財産権のルールが整理されている

  • 競業避止義務が合理的な範囲に限定されている

  • 質問に対して丁寧に説明してくれる

法務の不備は「炎上リスク」

逆に、法務面の不備は以下のようなリスクにつながります。

  • 労働条件の不備によるトラブル → 口コミサイトへの悪評投稿

  • 競業避止義務の訴訟 → 業界内での悪評拡散

  • 知的財産権の帰属トラブル → プロダクト開発の停滞

エンジニアコミュニティは狭いため、一度悪評が広まると採用活動に長期的な影響を与えます。

法務チェックリスト:最低限これだけは押さえよう

採用フロー全体を通じて、以下の法務チェックリストを活用してください。

オファー・入社時:

  • 労働条件通知書の必須記載事項を網羅しているか

  • 就業場所・業務の「変更の範囲」を記載しているか

  • 試用期間の条件と評価基準を明示しているか

  • 秘密保持誓約書を準備しているか

知的財産権:

  • 雇用契約書に著作権の帰属条項があるか

  • 職務発明規程を策定・周知しているか

  • 業務委託契約に著作権譲渡条項があるか

  • OSSポリシーを整備しているか

退職対応:

  • 退職時の秘密保持義務を確認する手順があるか

  • 競業避止義務が合理的な範囲に限定されているか

  • アカウント削除・データ返却の手順が定められているか

FAQ(よくある質問)

Q. エンジニアの競業避止義務は何年くらいが有効ですか?

裁判例を踏まえると、IT業界では6ヶ月〜1年が妥当とされる傾向にあります。技術の進化が速いIT業界では、2年以上の制限は無効と判断されるリスクが高くなります。ただし、期間だけでなく、範囲の限定や代償措置の有無も総合的に判断されるため、弁護士への相談を推奨します。

Q. エンジニアが個人で開発したプロダクトの権利はどうなりますか?

就業時間外に、会社のリソースを使わずに開発したものであれば、原則として個人に権利が帰属します。ただし、会社の業務と密接に関連する分野の場合はグレーゾーンになり得ます。雇用契約で「個人開発の取り扱い」を明確にしておくのがベストです。

Q. 副業を全面禁止にすることは法的に可能ですか?

法律上、副業を全面禁止にすること自体は直ちに違法ではありません。しかし、厚生労働省のガイドラインでは副業・兼業を原則認める方向が示されており、合理的な理由なく全面禁止にすると、優秀なエンジニアの採用が難しくなるだけでなく、従業員のモチベーション低下にもつながります。

Q. 業務委託エンジニアに秘密保持義務を課すにはどうすればよいですか?

業務委託契約書に秘密保持条項を含めるか、別途NDA(秘密保持契約)を締結します。秘密情報の定義、義務の存続期間(契約終了後も含む)、違反時の損害賠償について明記しておきましょう。フリーランス新法により、取引条件の書面明示が義務化されているため、口頭だけの合意は避けてください。

Q. 試用期間中のエンジニアを解雇するのは難しいですか?

試用期間中であっても労働契約は成立しているため、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。スキル不足を理由にする場合は、具体的にどの業務ができなかったかの記録、改善のための指導記録、十分な改善期間の付与が重要です。入社14日以内であれば予告手当なしでの解雇が可能ですが、正当な理由は必要です。

Q. リモートワークの条件変更はどこまで企業に裁量がありますか?

2024年4月の改正により、就業場所の「変更の範囲」を労働条件通知書に明示することが義務化されました。入社時に「フルリモート」と明示していた場合、一方的に出社に切り替えることは労働条件の不利益変更に該当する可能性があります。変更する場合は、個別の合意を得るか、就業規則の変更手続き(合理性の要件を満たすこと)が必要です。

Q. エンジニアが退職時にソースコードを持ち出した場合、どう対応すべきですか?

まず、秘密保持契約・雇用契約の違反にあたるかを確認します。会社のソースコードは通常、営業秘密または著作物として保護されます。不正競争防止法に基づく差止請求・損害賠償請求が可能なケースもあります。予防策として、退職時にアクセス権限の即時剥奪、私物端末のデータ消去確認、退職時誓約書の取得を徹底しましょう。

まとめ:法務整備は「守り」であり「攻め」でもある

エンジニア採用における法務知識は、トラブルを未然に防ぐ「守り」の側面だけでなく、候補者からの信頼を獲得する「攻め」の採用ブランディングでもあります。

特にスタートアップや成長企業では、法務体制が整っていること自体が差別化ポイントになります。「この会社はしっかりしている」と思ってもらえるかどうかは、オファーレターの丁寧さや契約書の明確さにも表れます。

本記事で紹介した内容は、あくまで採用担当者・人事が押さえておくべき実務レベルの知識です。個別のケースについては、必ず弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談してください。

techcellarでは、エンジニア採用のプロセス設計からスカウト運用まで、採用活動全体をサポートしています。 法務面の整備も含めた採用体制の構築にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください

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