公開: 2026/3/30|更新: 2026/5/25
技術イベント・コミュニティ活用でエンジニア採用を加速させる実践ガイド
勉強会・ミートアップ・ハッカソン等の技術イベントを採用に活かす具体的な手法と運営ノウハウを解説
結論:技術イベント採用は「価値提供が先、採用は結果」という順序が9割
技術イベント・コミュニティを通じたエンジニア採用で成果を出すための最大のコツは、「技術コミュニティへの価値提供を先に置き、採用はその結果として現れる」という順序を徹底することだ。筆者が複数のスタートアップで採用支援をしてきた中で、失敗例の9割は「採用イベントの皮をかぶった会社説明会」になっていた。逆に、勉強会・ミートアップ・登壇などを通じて純粋に技術コンテンツを提供している企業は、3〜6ヶ月後に自然と採用パイプラインが太くなっていく。即効性はないが、複利で効くチャネルだ。
TL;DR(この記事の要約)
技術イベント・コミュニティ経由の採用は、転職市場に出てこない優秀層にリーチできる有力チャネル
勉強会・ミートアップ・ハッカソン・カンファレンスなど形式ごとに採用効果と運営コストが異なるため、自社の規模とフェーズに合わせた選択が重要
「採用イベント」ではなく**「技術コミュニティへの価値提供」**という姿勢が、エンジニアの信頼を得る最大のポイント
単発のイベント参加では成果が出にくく、3〜6ヶ月の継続的な関係構築が採用成果につながる
DevRel(Developer Relations)の考え方を取り入れることで、採用ブランディングと母集団形成を同時に実現できる
導入:このページでわかること
エンジニア採用の難易度は年々上がっています。求人媒体やスカウトメールだけでは、本当に欲しい層に届かない――そんな悩みを抱えるスタートアップの採用担当者や経営者は多いのではないでしょうか。筆者が現場で見ていても、優秀なエンジニアほど転職サイトに登録しておらず、技術コミュニティや勉強会を通じて次のキャリアを決めているケースが少なくありません。
技術イベントやコミュニティを活用した採用活動は、従来のチャネルではアプローチできなかった潜在層と自然に接点を持てる手法です。
このページでは、以下の内容を網羅的に解説します。
技術イベント・コミュニティ採用が注目される背景と従来手法との違い
イベント形式ごと(勉強会・ミートアップ・ハッカソン・カンファレンス)の特徴と使い分け
自社開催・外部参加それぞれの具体的な進め方
イベントから採用につなげるフォローアップ設計
DevRelの考え方を活かした中長期戦略
少人数チームでも実践できるスモールスタートの方法
「イベント採用って大企業向けでしょ?」と思っている方にこそ読んでほしい内容です。
1. なぜ今、技術イベント・コミュニティ経由の採用が有効なのか
従来チャネルの限界
エンジニア採用市場では、求人媒体・エージェント・スカウトが三大チャネルとして定着しています。しかし、筆者がスタートアップ支援で日々感じているのは、これらのチャネルが頭打ちになっている現実です。
チャネル | 強み | 限界 |
求人媒体 | 広い認知を獲得しやすい | 知名度の低い企業は埋もれる |
エージェント | スクリーニング済みの候補者を紹介 | 採用コストが高い(年収の30〜35%) |
ダイレクトスカウト | 能動的にアプローチできる | 返信率が低下傾向(多くの場合10%前後) |
特にスタートアップにとって深刻なのは、知名度がないために他社のスカウトに埋もれてしまう問題です。優秀なエンジニアには毎週のようにスカウトメールが届いており、「また知らない会社からだ」と思われた時点で読まれません。スカウトメールの返信率を上げる方法はスカウトメールの書き方ガイドで詳しく解説していますが、そもそもスカウト以外のチャネルを持つことが重要です。
技術コミュニティの影響力
一方で、エンジニアには独自の情報収集・キャリア形成の文化があります。
勉強会やカンファレンスで最新技術をキャッチアップする
OSSコミュニティで技術力を磨く
技術ブログやSNSで発信し、同業者とつながる
信頼するエンジニアの紹介で次の職場を選ぶ
つまり、エンジニアのキャリア意思決定において技術コミュニティが大きな影響力を持っているのです。技術イベントに企業として参加・主催することは、このコミュニティの中に自然な形で入り込む手段になります。
従来チャネルとの違い
技術イベント・コミュニティ経由の採用が他のチャネルと決定的に異なるのは、候補者が「採用される側」ではなく「対等な参加者」として接点を持つという点です。
求人票では伝わらない技術力やカルチャーを直接体感してもらえる
エンジニア同士の会話を通じて、**「この会社のエンジニアは面白い」**という信頼が生まれる
採用目的を前面に出さないため、転職意欲が低い潜在層にもリーチできる
筆者が支援した企業でも、技術イベント経由で入社した社員は、求人媒体経由と比較して1年後の定着率が明らかに高い傾向がありました。カルチャーマッチの事前確認が自然に行われることが主な理由と考えられます。
2. 技術イベントの種類と採用チャネルとしての特徴
技術イベントにはさまざまな形式があり、それぞれ採用効果・運営コスト・必要なリソースが異なります。自社の状況に合った形式を選ぶことが成功の第一歩です。
形式別の比較一覧
形式 | 規模 | 採用効果 | 運営コスト | 向いている企業 |
勉強会・LT会 | 10〜30名 | 中(深い対話可能) | 低(0〜5万円) | エンジニア2〜3名以上、まず始めたい企業 |
ミートアップ | 15〜50名 | 中〜高(職場体感) | 低〜中(5〜15万円) | オフィスに集客スペースがある企業 |
ハッカソン | 20〜100名 | 高(実力観察可) | 中〜高(20〜100万円) | 自社APIを公開できる企業、運営リソース確保可 |
カンファレンス・展示会 | 数百〜数千名 | 低〜中(認知拡大) | 高(50〜300万円) | 採用ブランディング投資できる成長企業 |
各形式の採用観点での使い分け
勉強会・LT会は、自社エンジニアが登壇することで技術力と開発文化をアピールできる形式です。少人数なので参加者と深い対話が可能で、connpassやTECHPLAYなどのプラットフォームで集客できます。まず1回やってみたいという企業は、ここから始めるのが定石です。
ミートアップは勉強会よりカジュアルで、交流を主目的とした形式。自社オフィスで開催すれば職場の雰囲気を体感してもらえます。定期開催することでリピーターが増え、コミュニティが形成されやすいのが強みです。
ハッカソンは、候補者の実際のコーディング力・問題解決力・チームワークを観察できる形式。共同作業を通じてカルチャーフィットを実感でき、技術意欲の強い人材にリーチできます。運営負荷は高いですが、採用に直結する可能性も高いです。
カンファレンス・技術系展示会は、RubyKaigi、iOSDC、PyCon JP、AWS Summit等の大規模イベントへのスポンサー参加。短期間で大量の認知獲得ができますが、スポンサーシップ費用は高く、ブランディング目的が中心です。
3. 自社主催イベントの企画・運営完全ガイド
自社で技術イベントを主催することは、少人数チームでも十分に実現可能です。ここでは、最もスモールスタートしやすい勉強会・ミートアップ形式を中心に、具体的な手順を解説します。
ステップ1:テーマと形式を決める
イベントのテーマ設計は、採用効果を左右する最も重要なポイントです。
良いテーマの条件:
自社のエンジニアが実体験に基づいて語れる内容であること
ターゲットとなるエンジニアが興味を持つ技術領域であること
他社のイベントと差別化できること
テーマ例:
企業の特徴 | テーマ例 |
GoでマイクロサービスをやっているSaaS企業 | 「Go × マイクロサービスで踏んだ落とし穴と解決策」 |
機械学習をプロダクトに組み込んでいる企業 | 「MLモデルを本番環境で安定稼働させるための工夫」 |
少人数でフルスタック開発をしている企業 | 「3人チームで月間100万PVのサービスを支える技術選定」 |
避けるべきテーマ: 自社の宣伝色が強すぎるもの(「弊社のサービスを紹介します」等)、一般的すぎて参加動機が弱いもの(「エンジニアのキャリアについて考える会」等)は集客が伸びません。
ステップ2:集客と告知
技術イベントの集客は、connpass(国内最大級のエンジニア向けイベントプラットフォーム)、TECHPLAY(企業主催イベントの掲載・集客に強い)、Doorkeeper(有料コミュニティ運営にも対応)などのプラットフォームを活用するのが定番です。
集客のコツ:
イベントタイトルは具体的な技術キーワードを含める(「React 19の新機能を試してみた」等)
概要文には「どんな人が対象か」「参加すると何が得られるか」を明記する
自社エンジニアのSNS(X、LinkedIn等)で告知する。LinkedIn活用はLinkedInエンジニア採用完全ガイドも参照
社内のエンジニアに「知り合いに声をかけて」とお願いする(リファラル的効果)
開催1週間前にリマインドを送る(参加率向上)
筆者の経験では、初回は15〜20名を目標にするのが現実的です。少人数でも「深い対話ができた」という手応えがあれば成功と考えましょう。
ステップ3:当日の運営
イベント当日の進行で、採用観点から意識すべきポイントがあります。基本的なタイムライン例(2時間の勉強会)は以下の通りです。
時間 | 内容 | ポイント |
0:00-0:05 | オープニング | 会社紹介は最小限(1分以内) |
0:05-0:30 | 発表1(自社エンジニア) | 技術的な内容に集中 |
0:30-0:55 | 発表2(外部ゲスト or 参加者LT) | 多様な視点を入れる |
0:55-1:05 | 休憩 | 飲み物を配布、自然な会話の時間 |
1:05-1:30 | 発表3 or ディスカッション | 参加者が発言できる機会 |
1:30-2:00 | 懇親タイム | ここが最重要。ピザやビールを用意 |
重要なポイント:
採用の話はこちらから切り出さない。興味を持ってくれた人が自然に聞いてくれる環境を作る
自社エンジニアが楽しそうに技術の話をしている姿を見せることが最大のアピール
懇親タイムでは、自社エンジニアが参加者に積極的に話しかける
名刺交換やSNSの相互フォローでつながりを残す
ステップ4:イベント後のフォローアップ
イベントを「やって終わり」にしないための仕組みが、採用成果を左右します。筆者が現場で必ず設計しているのは次の3段階です。
24時間以内:参加のお礼メールを送信。発表資料の共有、次回イベントの予告を含める
1週間以内:特に印象的だった参加者にSNSでつながり、カジュアル面談を打診
継続的:次回イベントの案内を定期送信。コミュニティとして育てる
カジュアル面談への誘導例:
「先日のイベントでお話しした○○の件、もう少し深く話してみたいなと思いました。よければ30分ほどカジュアルにお話しできませんか?採用面接ではなく、お互いの技術的な関心事について話す場にしたいです」
こうした**「技術的な関心」を入口にした自然な誘導**が、エンジニアに好まれるアプローチです。カジュアル面談の具体的な進め方についてはカジュアル面談完全ガイドを参考にしてください。
4. 外部イベントへの参加・登壇で採用効果を最大化する方法
自社主催だけでなく、外部の技術カンファレンスや勉強会への参加・登壇も強力な採用チャネルです。特にスポンサーシップは、短期間で大きな認知を獲得できます。
カンファレンススポンサーシップの活用
主要なエンジニア向けカンファレンスの例: RubyKaigi、Kaigi on Rails、iOSDC Japan、DroidKaigi、PyCon JP、Go Conference、TSKaigi、AWS Summit Japan、Google Cloud Next など。
多くのカンファレンスでは複数のスポンサープランが用意されており、一般的な構成は以下の通りです。
プラン | 費用感 | 含まれる内容 |
ゴールド以上 | 100〜300万円 | ブース出展、ロゴ掲載、登壇枠 |
シルバー | 50〜100万円 | ロゴ掲載、ノベルティ配布 |
ブロンズ | 10〜50万円 | ロゴ掲載 |
費用対効果の考え方: エージェント経由の採用は1名あたり150〜250万円程度のコストがかかります。カンファレンススポンサーで1名でも採用できれば十分にペイする計算です。加えて、採用ブランディング効果は数値化しにくいものの、長期的に候補者からの認知向上につながります。
ブース出展で成果を出すコツ
カンファレンスのブース出展は、やり方次第で大きな差が出ます。筆者が現場で観察してきた成功パターンと失敗パターンは明確に分かれます。
効果的なブース設計のポイント:
技術的なコンテンツを用意する:自社の技術的チャレンジを図解したポスター、アーキテクチャ図、技術クイズなど
エンジニアがブースに立つ:人事ではなく現場のエンジニアが対応することで、技術的な会話が生まれる
ノベルティに工夫する:エンジニアが実際に使うもの(高品質なステッカー、技術書、ガジェット等)が喜ばれる
QRコードで接点を残す:自社テックブログやイベントページへの導線を設置
避けるべきNG行動: 人事担当者だけがブースに立ち、一方的に会社説明をする/「今、転職考えてますか?」とストレートに聞く/技術的な質問に答えられない状態で参加する — この3つは確実に逆効果です。
登壇によるブランディング
カンファレンスや外部勉強会での登壇は、最もコストパフォーマンスの高い技術ブランディング手法の一つです。「○○社のエンジニアが登壇するくらいだから技術力が高いのだろう」という認知効果が生まれ、スライドがSNSでシェアされてイベント参加者以外にもリーチします。登壇後の懇親会でも話しかけてもらいやすくなります。
登壇テーマの選び方:
自社で実際に取り組んだ技術的チャレンジをベースにする
失敗談・苦労話を含めると共感を得やすい
「○○を△△で解決した話」という形式が具体的で好まれる
登壇未経験のエンジニアを支援するには、 社内でリハーサルの場を設ける、スライドレビューを行う、「まずは社内LTから」と段階的に経験を積む仕組みを作る、登壇を人事評価に加点する(インセンティブ設計)の4つが効果的です。
5. DevRelの考え方を採用戦略に取り入れる
DevRelとは何か
DevRel(Developer Relations)とは、企業と開発者コミュニティの間に良好な関係を構築するための活動全般を指します。もともとはプロダクトの開発者向けマーケティング手法ですが、その考え方はエンジニア採用にも直接応用できます。
DevRelの核心は、**「まず開発者コミュニティに価値を提供し、その結果として企業への信頼と認知が高まる」**という長期的なアプローチです。
採用に活かすDevRelの3つの柱
1. コンテンツ(Content): テックブログで自社の技術的な取り組みを発信(テックブログ運営ガイドも参照)、登壇資料をSpeaker Deckで公開、OSSの公開・メンテナンス。
2. コミュニティ(Community): 自社主催の勉強会・ミートアップの定期開催、外部コミュニティへのスポンサー・参加、Discordやslack等のオンラインコミュニティ運営。
3. コミュニケーション(Communication): SNS(X、LinkedIn)での技術発信、カンファレンスでの登壇、開発者向けのニュースレター配信。
これらの活動を採用目的だけでなく、技術コミュニティへの貢献として位置づけることが重要です。「採用のためにやっている」と透けて見えると、エンジニアは離れていきます。専門のDevRel担当を置く戦略についてはDevRel採用戦略ガイドで別途解説しています。
DevRelを小さく始める6ヶ月ロードマップ
DevRelは大企業だけのものではありません。3〜5名のエンジニアチームでも、以下のステップで始められます。
期間 | フェーズ | 主なアクション |
Month 1-2 | 種まき | テックブログ開設(月2本)/connpassグループ作成・初回勉強会企画/エンジニアのSNSアカウント整備 |
Month 3-4 | 育てる | 勉強会を月1回ペースで定期開催/外部カンファレンス登壇にチャレンジ(CFP応募)/参加者フォローアップ仕組み化 |
Month 5-6 | 刈り取り | コミュニティ参加者からカジュアル面談打診開始/イベント経由KPI(面談数、選考移行率)計測/成功パターン分析と次クォーター計画反映 |
DevRelの効果測定
DevRel活動の効果を採用に結びつけて測定するためのKPIを設定しましょう。KPI設計の全体像はエンジニア採用KPI完全ガイドも参考になります。
指標 | 計測方法 | 目安 |
イベント参加者数 | connpass/TECHPLAY等の数値 | 月間30名以上 |
SNSフォロワー増加数 | X/LinkedIn等のアナリティクス | 月間50名以上 |
テックブログPV | GA等のアクセス解析 | 月間3,000PV以上 |
カジュアル面談実施数 | 採用管理ツール | 月間3件以上 |
イベント経由の応募数 | 流入経路の追跡 | 月間1-2件 |
イベント経由の採用数 | 採用管理ツール | 四半期1名以上 |
6. 少人数チームのためのスモールスタート戦略
「うちはエンジニアが数人しかいないから、イベントなんてできない」と思うかもしれません。しかし、筆者の経験では少人数チームだからこそ技術イベントとの相性が良い面があります。意思決定が速く(「来月イベントやろう」と決めてすぐ動ける)、全員がプレイヤーで登壇者に困らず(全員が技術の最前線にいる)、少人数ならではの濃い交流が生まれ、「こんな少人数でこれをやってるの?」というストーリー自体が強い採用訴求になります。
最小リソースで始める3パターン
パターン | リソース | コスト | 期待効果 |
外部勉強会にLT枠で参加 | エンジニア1名、準備3〜5時間 | 0円 | 10〜30名へのリーチ、SNS露出 |
オフィスで小規模勉強会を月1開催 | 企画運営1名、登壇者1〜2名 | 1〜3万円/回(飲食費) | 毎月10〜15名と接点、リピーター獲得 |
オンライン勉強会から開始 | 企画運営1名、登壇者1名 | 0円(既存ビデオ会議ツール) | 地方在住エンジニアにもリーチ |
最もハードルが低いのは「外部勉強会にLT枠で参加」です。connpassで自社の技術スタックに関連する勉強会を見つけ、LT枠に応募するだけ。物理的なスペースがなくても、Zoom等を使ったオンライン勉強会なら場所の制約がありません。
失敗しないための注意点
筆者がこれまでに見てきたやりがちな失敗と対策をまとめます。
失敗パターン | 対策 |
集客が集まらない | テーマを具体的・ニッチにする。「React勉強会」より「React Server Componentsのキャッシュ戦略」 |
採用色が強すぎて参加者が引く | 会社紹介は冒頭1分のみ。採用ページのURLをスライドの最後に1枚入れるだけにする |
1回やって燃え尽きる | 最初から月1回の定期開催を宣言し、ルーティン化する |
発表の質が低い | 事前に社内リハーサルを実施。フィードバックをもらう |
フォローアップしない | 参加者リストの管理とお礼メールのテンプレートを事前に用意する |
7. イベント採用を成功させるための組織的な仕組みづくり
技術イベントを「単発のイベント」ではなく「採用チャネル」として機能させるには、組織として仕組みを整える必要があります。
エンジニアと採用チームの役割分担
技術イベントで成果を出すには、エンジニアと人事・採用チームの連携が不可欠です。
役割 | エンジニア | 人事・採用チーム |
イベント企画 | テーマ選定、技術的な内容の監修 | イベントの告知・集客、会場手配 |
当日運営 | 登壇、技術的な質問対応 | 受付、司会、参加者情報の管理 |
フォローアップ | 技術的な会話の継続(SNS等) | カジュアル面談の日程調整、CRM入力 |
効果測定 | コンテンツの質に関するフィードバック | 採用KPIの追跡・レポーティング |
エンジニアのモチベーションを維持するには: イベント登壇・運営を人事評価に加点する制度を作る、「技術広報手当」として月額1〜3万円の手当を設けている企業もある、登壇後に社内で称賛する文化を作る(Slackでの「いいね」、社内表彰等)、個人の技術ブランディングにもつながることを伝える、の4つが効きます。
CRMとの連携
イベントで出会った候補者を適切に管理しないと、せっかくの接点が無駄になります。筆者が現場で必ず仕込むフローは次の通りです。
イベント参加者のリストを作成(connpassのCSVエクスポート等を活用)
特に印象的だった参加者にラベルをつける(「技術力高」「自社に興味あり」等)
ATS(採用管理システム)のタレントプールに登録し、流入経路を「イベント名」で記録
フォローアップの進捗をATS上で追跡
この仕組みにより、「あのイベントで出会った人が3ヶ月後に応募してくれた」といった中長期の効果を可視化できます。タレントプールの構築・運用についてはタレントプール構築ガイドで詳しく解説しています。
年間イベントカレンダーの策定
場当たり的にイベントを企画するのではなく、年間カレンダーとして計画することで、リソース配分と効果の最大化が図れます。スタートアップ向けの一例:
第1四半期(4-6月): 月例ミートアップを定着させる。6月はRubyKaigi等のスポンサー検討
第2四半期(7-9月): 月例継続+8月は夏のハッカソン(小規模)/9月はiOSDC等への参加・LT
第3四半期(10-12月): 月例継続+11月は技術振り返り勉強会/12月は年末LT大会
第4四半期(1-3月): 1月にカンファレンスCFP準備/2-3月は月例継続
8. オンライン・ハイブリッド開催の使い分け
コロナ禍以降、オンライン開催やハイブリッド開催が定着しました。それぞれの特徴を理解し、適切に使い分けましょう。
オンライン開催の特徴
メリット | デメリット |
場所の制約がなく、地方・海外在住エンジニアにもリーチ | 参加者との深い交流が難しい |
会場費がかからず、運営コストが低い | 「ながら参加」が多く、エンゲージメントが低い傾向 |
録画してアーカイブ配信すれば、イベント後も集客効果が継続 | オフラインほどの印象を残しにくい |
参加のハードルが低く、多くの参加者を集めやすい | — |
オンラインイベントを成功させるコツ: チャットを活発に使い参加者が発言しやすい雰囲気を作る、発表の合間に質問タイムを挟む、ブレイクアウトルームを使った少人数のディスカッションを取り入れる、終了後にオンライン懇親会(任意参加)を設ける、の4点です。
ハイブリッド開催の活用
オフラインとオンラインを組み合わせたハイブリッド開催は、双方のメリットを享受できます。オフライン参加者にはネットワーキングの体験を重視、オンライン参加者にはチャットでの交流とアーカイブ動画を提供、配信用の機材(カメラ、マイク)と人員を確保する、オンライン参加者を「置いてけぼり」にしないようチャットのモデレーターを配置する、の4点を押さえると失敗しません。
FAQ(よくある質問)
Q1. 技術イベントを採用目的で開催するのはエンジニアに嫌がられませんか?
嫌がられるのは**「採用イベントの皮をかぶった会社説明会」**です。技術的に有益なコンテンツを提供し、参加者に学びや交流の価値を感じてもらえれば、そこに採用の文脈があっても自然に受け入れられます。重要なのは、コミュニティへの価値提供が先、採用はその結果という順序です。
Q2. イベントを始めたいのですが、社内にイベント運営の経験者がいません。どうすれば良いですか?
まずは外部の勉強会にLT枠で参加するところから始めましょう。自社で主催する前に、他のイベントの運営方法を参加者として学べます。また、connpassやTECHPLAYなどのプラットフォームには、イベントページの作成からリマインド送信まで基本的な運営機能が揃っています。最初の1回は10名規模で十分です。
Q3. 技術イベント経由の採用は、成果が出るまでにどれくらいかかりますか?
一般的に3〜6ヶ月は見ておく必要があります。技術イベント経由の採用は「関係構築型」のチャネルなので、単発のイベントで即採用というケースは稀です。ただし、継続的にイベントを開催することでタレントプールが蓄積され、時間とともに採用効果が加速していきます。「半年後に成果が出る種まき」と位置づけてください。
Q4. イベントの費用対効果はどう測れば良いですか?
直接的な指標として「イベント経由の応募数・採用数」を追いつつ、間接的な指標として「テックブログのPV増加」「SNSフォロワーの増加」「カジュアル面談の申し込み数」も計測しましょう。また、エージェント経由の採用コスト(年収の30〜35%)と比較することで、投資対効果を把握できます。月1回の勉強会のコスト(飲食費1〜3万円)はエージェント1回分の費用の数十分の一です。
Q5. オフラインとオンライン、どちらで開催すべきですか?
目的によって使い分けるのがベストです。候補者との深い関係構築が目的ならオフライン、認知拡大やリーチの最大化が目的ならオンラインが向いています。まだ始めたばかりの段階では、コストが低いオンラインから始めるか、自社オフィスを使った少人数のオフラインイベントがおすすめです。
Q6. エンジニアに登壇してもらいたいのですが、断られます。どうすれば?
エンジニアが登壇をためらう理由の多くは「人前で話すのが苦手」「準備の時間がない」です。対策として、まずは社内LT(5分程度)から始めてもらいましょう。また、登壇準備を業務時間として認める、スライドレビューのサポートを行う、登壇を人事評価に加点するなどの組織的な支援が有効です。
Q7. 技術イベントと並行して活用すべき採用チャネルは?
技術イベントは**テックブログ・SNS発信・リファラル採用**との相乗効果が大きいです。イベントで発表した内容をブログ記事化し、SNSでシェアすることで接点を最大化できます。また、イベント参加者がリファラル候補になるケースも多いため、リファラル制度と組み合わせるとさらに効果的です。
Q8. 最初の1回のイベントは何から準備すればよいですか?
筆者がスタートアップに最初に勧めるのは、**「自社エンジニアが普段やっている技術的な工夫を1テーマだけ取り出し、30分のLT勉強会としてconnpassで募集する」**という最小構成です。場所はオフィスの会議室、参加者15名上限、発表は1本、懇親はピザを発注するだけ。準備期間は2週間で十分です。これを月1回続けるだけで、半年後にはコミュニティの輪郭ができ、採用の入り口が広がります。
まとめ:技術コミュニティへの投資は最も息の長い採用チャネル
技術イベント・コミュニティを活用した採用は、即効性こそないものの、継続すればするほど複利的に効果が積み上がるチャネルです。
今日からできるアクション:
今月中に:connpassで自社の技術スタックに関連する勉強会を1つ見つけ、参加してみる
来月中に:自社エンジニアに1人、外部勉強会でのLT登壇をお願いする
3ヶ月以内に:自社初の勉強会・ミートアップを開催する
半年以内に:月1回のイベント定期開催を仕組み化する
求人媒体やスカウトだけに頼る採用から、技術コミュニティを通じた「ファンづくり」型の採用へ。この転換ができた企業は、中長期でエンジニア採用の競争力を大きく高められます。
「自分たちの技術を面白いと思ってくれる人と一緒に働きたい」――そんなシンプルな想いを、イベントという場を通じて届けてみてください。
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現役エンジニアでありながら、スタートアップのエンジニア採用支援を行う。採用コンサル営業として採用を売る側の経験と、エンジニアとして採用される側の経験を併せ持つ。13以上のダイレクトスカウトサービスの運用経験をもとに、AI×採用の実践ノウハウを発信。
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