公開: 2026/4/5|更新: 2026/6/17
非エンジニア人事の技術リテラシー入門|採用力を高める実践ガイド
非エンジニアの人事・採用担当者が技術リテラシーを身につけ、エンジニア採用力を高める実践手法を解説
TL;DR(この記事の要約)
非エンジニア人事の技術リテラシーとは、エンジニアの仕事・思考・用語を理解する力であり、持つだけでスカウト返信率・選考精度・候補者体験が大きく改善します。
「プログラミングができる」必要はない。エンジニアの仕事・思考・用語を理解するレベルで十分
学ぶべき知識は「職種分類」「技術スタックの読み方」「開発プロセス」「キャリア観」の4領域
最速のインプット方法は社内エンジニアとの定期的な1on1と、実際のコードを見せてもらうこと
90日のステップアップ計画に沿えば、非エンジニアでもエンジニアと「同じ言語」で会話できるようになる
非エンジニア人事の技術リテラシーとは|結論
非エンジニア人事の技術リテラシーとは、自分でコードを書く力ではなく、エンジニアの職種・技術スタック・開発プロセス・キャリア観を理解し、採用活動に翻訳できる力のことです。プログラミングスキルは不要で、「フロントエンドとバックエンドの違い」「技術スタックの読み方」「アジャイル開発の流れ」を説明できるレベルで十分に成果が変わります。学ぶべきは「職種分類」「技術スタックの読み方」「開発プロセス」「キャリア観」の4領域で、社内エンジニアとの定期1on1を軸にすれば90日で習得できます。
筆者は採用コンサル営業としてエンジニア採用を「売る側」で経験し、その後エンジニアとして「採用される側」も経験しました。両方の立場で見てきたからこそ断言できるのは、技術を理解しようとする人事は候補者から圧倒的に信頼される、ということです。
「フロントエンドとバックエンドの違いがわからない」「スカウトメールを書いても返信が来ない」「面談でエンジニアと話がかみ合わない」――こうした悩みを持つ採用担当者は少なくありません。
エンジニア採用の市場は年々競争が激化しています。2026年1月時点のITエンジニアの新規有効求人倍率は3.4倍(出典:doda「IT・通信の転職市場動向 2026上半期」)。3社以上が1人のエンジニアを取り合う環境では、採用担当者の技術理解の差が結果を分けます。
技術への理解が浅い採用担当者とのやり取りに、多くのエンジニアはストレスを感じています。本記事では、必要性の理由・職種とキャリアパスの全体像・技術スタックと開発プロセスの読み解き方・信頼を築くコミュニケーション術・90日ロードマップまでを順に解説し、その差を埋めます。
非エンジニア人事に技術リテラシーが必要な5つの理由
技術リテラシーが採用成果を左右する理由は、次の5点に集約されます。
スカウトメールの返信率が変わる — 候補者の経験に合った言葉でアプローチできる
要件定義の精度が上がる — MUST/WANTを技術的な粒度で切り分けられる
書類選考が的確になる — 明らかなミスマッチを一次フィルタで弾ける
面談・面接での候補者体験が向上する — 技術的な質問に最低限答えられる
社内エンジニアからの信頼を得られる — 採用協力のモチベーションが上がる
以下、それぞれを具体的に解説します。
理由1:スカウトメールの返信率が変わる
エンジニアはスカウトメールを受け取った瞬間に「この人は技術を理解しているか」を判断します。たとえば「Javaの経験があるようですので、弊社のJavaScript案件にぴったりです」という文面は、名前が似ているだけで全く異なる言語を混同しており、即座にスルーされます。
技術リテラシーがあれば、候補者の経験に合った言葉でアプローチでき、「この会社はちゃんと自分のことを見ている」と感じてもらえます。スカウトメールの書き方の詳細は「エンジニア向けスカウトメールの書き方と返信率を上げる例文集」も参考にしてください。
理由2:要件定義の精度が上がる
「優秀なエンジニアが欲しい」ではエンジニアは集まりません。採用要件を具体化するには、以下のような技術的な粒度が必要です。
どの技術スタックでの経験が必要か
どのレベルの設計力を求めるか(実装のみ?アーキテクチャ設計?)
チームの開発プロセスに適応できるか(スクラム経験の有無など)
技術を理解していれば、現場のエンジニアとの要件すり合わせが格段にスムーズになります。採用ペルソナの設計方法については「エンジニア採用ペルソナ設計の実践ガイド」で詳しく解説しています。
理由3〜5:書類選考・候補者体験・社内信頼が改善する
基礎的な技術知識があれば、明らかなミスマッチを一次スクリーニングで弾け、現場エンジニアにすべての書類を回す選考ボトルネックが解消します(理由3)。また、カジュアル面談で「御社はReact + TypeScriptで、最近Next.jsへ移行中ですよね」と言える人事は候補者に安心感を与え、志望度を高めます(理由4)。そして、技術を理解しようとする姿勢は現場エンジニアからの信頼を生み、採用協力のモチベーションを引き出します。「技術は任せます」という丸投げ姿勢は逆効果です(理由5)。
エンジニア職種の全体像を理解する
エンジニアと一口に言っても、職種は多岐にわたります。採用担当者がまず覚えるべきは、職種ごとの「何をする人か」「どんな技術を使うか」「市場での希少度」の3点です。
開発系エンジニア
フロントエンドエンジニア:ユーザーが触れる画面を作る。HTML/CSS、JavaScript、React、Vue.js、TypeScriptなど。デザイナーと連携することが多い
バックエンドエンジニア:サーバー側の処理(DB連携・ビジネスロジック・API設計)を担当。Python、Go、Java、Ruby、Node.js、PHP、SQLなど
フルスタックエンジニア:フロント・バックの両方を一人でカバー。スタートアップで重宝され、市場でも希少で採用難易度が高い
モバイルエンジニア:iOS(Swift)やAndroid(Kotlin)のアプリを開発。Flutter(Dart)やReact Nativeなどクロスプラットフォーム技術を使う場合も
インフラ・運用系エンジニア
インフラエンジニア / SRE:サービスが動く基盤を構築・運用。AWS・GCP・Azureの知識が重要。SREは加えてサービスの信頼性・可用性を専門的に担保
DevOpsエンジニア:開発と運用の橋渡しを行い、CI/CDパイプラインの構築や自動化を推進
セキュリティエンジニア:脆弱性診断・セキュリティ設計・インシデント対応が主業務。需要急増だが人材は極めて少ない
データ・AI系エンジニア
データエンジニア:データの収集・加工・蓄積基盤を構築。SQLに加えApache Spark、Airflow、BigQuery、Snowflakeなど
機械学習エンジニア / AIエンジニア:MLモデルを設計・開発・運用。Python、TensorFlow、PyTorchなど。2026年現在、LLM関連スキル保有者は特に希少
データサイエンティスト:データ分析で意思決定を支援。統計・機械学習の知識に加えビジネス理解が必要
マネジメント系
テックリード / リードエンジニア:チームの技術方針を決めるシニアエンジニア。コードも書く
エンジニアリングマネージャー(EM):エンジニアのピープルマネジメント(1on1・評価・チーム編成・採用)を担当
CTO / VPoE:技術組織全体の戦略を統括する経営レベル。CTOは技術戦略、VPoEは組織・人事戦略にフォーカスする傾向
職種ごとの市場希少度と採用難易度
職種ごとに採用難易度は大きく異なります。難易度を把握しておくと、現場の依頼に対して現実的な期間・コストの見通しを示せます。
採用難易度が特に高い:SRE / プラットフォームエンジニア(インフラと開発の両スキルが必要で絶対数が少ない)、セキュリティエンジニア(経験者の母数が限られる)、機械学習 / MLOpsエンジニア(AI需要に供給が追いつかない)、シニアのフルスタックエンジニア
比較的採用しやすい:ジュニアフロントエンドエンジニア(学習リソースが豊富)、QAエンジニア(手動テスト中心、参入しやすい)
これを踏まえれば、「この職種なら1ヶ月で決まる」と安易に約束せず、現実的なスケジュールを提示できます。なお、一度に全職種を覚える必要はありません。まず自社の採用対象を深く理解し、隣接職種に広げるのが効率的です。自社エンジニアに「うちの技術構成を図にすると?」と聞き、簡単な構成図を見せてもらうだけで職種間の関係が一気にクリアになります。
技術スタックの読み解き方
技術スタックとは何か
技術スタック(テックスタック)とは、サービスを開発するために使う技術の組み合わせのことです。採用では求人票やスカウトメールに記載する技術要件の基盤になります。典型例は「フロントエンド: React + TypeScript、バックエンド: Go + PostgreSQL、インフラ: AWS(ECS, RDS)、CI/CD: GitHub Actions」のような記述です。エンジニアの多くはこれを見て「自分のスキルが活かせるか」「新しい技術に挑戦できるか」を判断するため、採用担当者が正確に理解・伝達できることが応募意欲に直結します。
よくある技術スタックの構成要素
技術スタックは通常、次のレイヤーで構成されます。
プログラミング言語:JavaScript/TypeScript、Python、Go、Java、Ruby、PHP、Swift、Kotlinなど
フレームワーク:React(JS)、Django(Python)、Ruby on Rails(Ruby)、Spring(Java)、Next.js(React上のフルスタック)など、開発を効率化する「型」
データベース:PostgreSQL・MySQL(リレーショナル)、MongoDB(NoSQL)、Redis(キャッシュ)など
クラウドインフラ:AWS・GCP・Azureが3大クラウド
開発ツール・CI/CD:Git(ソース管理)、GitHub/GitLab、Docker(コンテナ)、GitHub Actions/CircleCI(自動テスト・デプロイ)など
技術選択がエンジニアの応募に与える影響
モダンな技術スタック(Go、Rust、TypeScript、Kubernetesなど)は技術志向のエンジニアから注目されやすく、レガシー技術(古いPHP、jQuery中心など)のみだと「成長が見込めない」と判断されることがあります。ただしレガシー技術が一律にダメなのではなく、「なぜその技術を選んでいるか」「今後どう進化させるか」を語れることが重要です。
人事が技術スタックを学ぶ実践的な方法
自社の技術スタックを一覧にする:CTOやリードエンジニアに聞いて、レイヤーごとに整理する
各技術の「一言説明」を作る:「React = ユーザーが触れる画面を作るためのJavaScriptライブラリ」のように
採用対象のポジションに関連する技術を重点的に覚える:全部覚える必要はない
競合他社の求人票を読む:同じ職種でどんな技術が使われているかを比較する
開発プロセスとエンジニアの働き方を理解する
エンジニアの仕事は「コードを書く」だけではありません。開発プロセス全体を理解することで、エンジニアが何に時間を使い、どんなスキルが求められるのかが見えてきます。
開発プロセスの基本的な流れ
一般的なソフトウェア開発プロセスは、次の6ステップのサイクルで回ります。
要件定義・設計 — 何をどう作るかを決め、技術的な設計書を作成する
実装(コーディング) — 実際にコードを書く。純粋にコードを書く時間は業務時間の50%程度で、残りはレビュー・設計・調査に使われる
コードレビュー — メンバー相互にコードをチェックし、品質担保と知識共有を行う
テスト — 自動テスト(ユニット・統合)と手動テストでバグを確認する
デプロイ(リリース) — 完成したコードを本番環境に反映する
運用・監視 — リリース後の稼働状況を監視し、障害に対応する
アジャイル開発・スクラムとウォーターフォール
多くのIT企業が採用するアジャイル開発の代表的フレームワークがスクラムです。1〜2週間の「スプリント」で計画 → 実装 → レビュー → 振り返り(レトロスペクティブ)を繰り返します。対比されるのがウォーターフォール開発で、「要件定義 → 設計 → 実装 → テスト → リリース」を上流から順番に進め、変更の少ない大規模プロジェクト(官公庁・金融基幹系など)に適しています。
面接で「前職の開発手法は?」と聞き、「ウォーターフォール中心」なら自社がアジャイルの場合は適応を追加確認、「スクラムで3年」なら即フィットの可能性が高い、と判断材料になります。
エンジニアが「良い開発環境」と感じるポイント
採用活動で自社の魅力を伝えるために、エンジニアが重視する開発環境のポイントを知っておくと効果的です。
コードレビュー文化:きちんとしたレビュープロセスがあるか
CI/CDの整備:自動テスト・自動デプロイが整っているか
技術的な裁量:技術選定にエンジニアが関与できるか
ドキュメント文化:設計書やADR(Architecture Decision Record)が整備されているか
技術的負債への取り組み:古いコードの改善に時間を割けるか
開発用PCのスペック:MacBook Pro(M系チップ)+ 外部モニターが標準的
これらは求人票やカジュアル面談で伝えるべき情報です。「ウチは自由にやってもらえます」という抽象的な表現よりも、具体的な開発環境の説明のほうがエンジニアには刺さります。求人票での技術情報の伝え方については「エンジニアが応募したくなる求人票(JD)の書き方完全ガイド」も合わせてご覧ください。
エンジニアのキャリア観と転職動機を把握する
エンジニアはなぜ転職するのか
エンジニアの転職動機は、一般的なビジネス職とは異なる傾向があります。給与はもちろん重要ですが、それだけが決め手になるわけではありません。
エンジニアの転職理由として多いもの:
技術的な成長の限界:同じ技術を使い続けることへの危機感
プロダクトへの共感不足:自分が何を作っているかにやりがいを感じられない
技術的負債の蓄積:レガシーコードの保守ばかりで新しいことに挑戦できない
チーム・組織への不満:コードレビューがない、技術的な議論ができないなど
市場価値とのギャップ:現在の報酬が市場価格と乖離している
2つのキャリアパス:ICとマネジメント
エンジニアのキャリアパスには大きく2つの方向性があります。
IC(Individual Contributor)トラック 技術を突き詰めるキャリア。シニアエンジニア → スタッフエンジニア → プリンシパルエンジニアのように進む。コードを書き続けながら、より大きな技術的意思決定を担う。
マネジメントトラック チームやエンジニアリング組織のマネジメントに進むキャリア。テックリード → エンジニアリングマネージャー → VPoE / CTOのように進む。
面談で「将来のキャリアイメージはどちらに近いですか?」と質問すると、候補者の志向性が見えてきます。自社にどちらのキャリアパスも用意できるかどうかは、採用力に大きく影響します。キャリアパス設計の詳細は「エンジニアのキャリアパス設計で採用力と定着率を高める実践ガイド」をご覧ください。
年収相場の基本知識
エンジニアの年収は職種・経験年数・技術領域によって大きく異なります。2026年時点の大まかな相場感は以下の通りです(出典:各転職サービスの公開データを参考にした一般的な傾向)。
ジュニア(経験1〜3年):400万〜550万円
ミドル(経験3〜7年):550万〜800万円
シニア(経験7年以上):800万〜1,200万円
テックリード / EM:900万〜1,500万円
CTO / VPoE:1,200万〜2,000万円以上
AI/ML、セキュリティ、SREなどの専門領域はさらに相場が高い傾向があります。報酬設計の戦略については「エンジニア採用で勝つための報酬設計と年収戦略の完全ガイド」で詳しく解説しています。
書類選考で技術キーワードを読み解くコツ
エンジニアの職務経歴書には独特の記述が並びますが、技術スキル欄とプロジェクト経歴の2点を押さえるだけで、一次フィルタリングの精度は大きく上がります。
技術スキル欄で見るポイント:
幅と深さのバランス:幅広く並ぶならジェネラリスト志向、特定領域に集中ならスペシャリスト志向
技術の世代:jQueryやAngularJS(1系)中心ならモダン技術への移行経験を確認。逆に最新技術ばかりで実務が浅いケースもある
インフラ・DevOps記載の有無:Terraform・Docker・Kubernetes・CI/CDの記載があれば運用も理解しているシグナル
プロジェクト経歴で見るシグナル:
「設計から実装、テスト、リリースまで担当」→ 幅広い工程をカバーできる
「チームリーダーとして5名を管理」→ マネジメント経験あり
「月間数百万PVのサービスのパフォーマンス改善」→ 大規模トラフィックの経験あり
「レガシーからのリプレイスを主導」→ 技術的判断力と推進力がある
エンジニアとの信頼関係を築くコミュニケーション術
技術知識を身につけることと同じくらい重要なのが、エンジニアとの信頼関係の構築です。「技術がわからない人事」が嫌われるのではなく、「技術をわかろうとしない人事」が嫌われるのです。
社内エンジニアとの関係構築
現場エンジニアと月1〜2回・15〜30分の1on1を持つだけで、技術理解は大きく深まります。「最近の技術的な取り組みは?」「採用するならどんなスキルの人が理想?」といった自由な議題で構いません。加えて、スプリントレビュー(開発成果のデモ)への参加や、社内勉強会・LT会への参加も有効です。内容が100%わからなくても、「技術への関心」を行動で示すこと自体が信頼につながります。
候補者との面談で信頼を得るコミュニケーション
候補者との面談では、次の3点が信頼を左右します。
知ったかぶりをしない — 曖昧に流さず「すみません、もう少し教えていただけますか?」と正直に聞く。エンジニアは技術に誠実な人を信頼する
技術の「すごさ」を理解していることを示す — GitHubやポートフォリオを事前確認し、「OSSに貢献されているんですね」と具体的に言及すると志望度が上がる(評価観点は「エンジニア採用でGitHub・ポートフォリオを正しく評価する実践ガイド」を参照)
エンジニア視点で自社の魅力を語る — 「福利厚生が充実」より「Next.js + GoのAPIをモノレポで運用、CI/CDはGitHub Actionsで完全自動化」のような具体情報が響く
避けるべきコミュニケーション
技術を一括りにする:「プログラミングできる方を探しています」は範囲が広すぎる
肩書きだけで判断する:「シニアエンジニア」の定義は企業によって異なる
相手の技術を否定する:「うちはRubyじゃなくてGoを使っているので...」のような言い方は失礼にあたる場合がある
業務委託・SES経験を軽視する:正社員経験と同等以上のスキルを持つエンジニアは多い
人事が覚えるべき技術用語30選
エンジニアとの会話で頻出する用語をカテゴリ別にまとめました。すべてを暗記する必要はありませんが、採用活動の場面で出てきたときに「何の話をしているか」がわかるレベルを目指しましょう。
開発プロセス関連
Git:ソースコードの変更履歴を管理するツール。エンジニアの日常業務に不可欠
プルリクエスト(PR):コードの変更をチームに提案し、レビューを依頼する仕組み
CI/CD:Continuous Integration / Continuous Delivery。コードの変更を自動でテスト・デプロイする仕組み
デプロイ:作ったプログラムを本番環境に反映すること
スプリント:アジャイル開発で使う、1〜2週間の開発サイクル
アーキテクチャ関連
API(Application Programming Interface):異なるシステム同士がデータをやり取りする仕組み
マイクロサービス:大きなシステムを小さな独立したサービスに分割する設計手法
モノリス:マイクロサービスの対義語。1つの大きなアプリケーションとして構築する方式
コンテナ(Docker):アプリケーションとその動作環境をまとめてパッケージングする技術
Kubernetes(K8s):コンテナの運用管理を自動化する仕組み
クラウド・インフラ関連
AWS / GCP / Azure:3大クラウドプラットフォーム
サーバーレス:サーバー管理をクラウド事業者に任せ、コード実行に集中できる仕組み
可用性(Availability):システムが停止せずに稼働し続ける能力
開発文化関連
OSSコントリビューション:オープンソースへの貢献。技術力の証明になる
テスト駆動開発(TDD):テストコードを先に書いてから実装する開発手法
リファクタリング:動作を変えずにコードの内部構造を改善すること
技術的負債:短期的な対応で蓄積され、将来の開発効率を下げるコード・設計の問題
AI・最新技術関連
LLM(Large Language Model):ChatGPTに代表される大規模言語モデル
RAG(Retrieval-Augmented Generation):外部データを検索してAIの回答精度を高める手法
プロンプトエンジニアリング:AIに適切な指示を出すための技術
MLOps:機械学習モデルの開発から運用までのプロセスを効率化する手法
採用で特に使う用語
スケーラビリティ:利用者が増えてもシステムが対応できる拡張性
モダンフロントエンド:React、Vue.js、Svelteなどの最新フロントエンド技術群
90日で「エンジニアと対等に話せる人事」になるロードマップ
一度にすべてを学ぼうとすると挫折します。以下の段階的なロードマップに沿って、着実にレベルアップしていきましょう。
Day 1〜30:基礎固め
目標:エンジニアの職種・キャリアパスを理解し、自社の技術構成を説明できる
やること:
自社で採用しているエンジニア職種の仕事内容を整理する
CTOまたはテックリードに「自社の技術スタック解説」をしてもらう(30分程度)
自社の技術スタックを一覧表にまとめ、各技術の一言説明を作る
エンジニア職種マップを手元に置き、求人票作成時に参照する
『採用・人事担当者のためのITエンジニアリングの基本がわかる本』を読む(書籍)
この段階での成果物: 自社の技術スタック一覧表、エンジニア職種の自社版マッピング
Day 31〜60:実践投入
目標:スカウトメールに技術的な具体性を入れ、書類選考の一次判断ができる
やること:
現場エンジニアとの1on1を月2回開始する
スカウトメールを書いたら、現場エンジニアにレビューしてもらう
候補者の職務経歴書を現場エンジニアと一緒に読み、判断基準を学ぶ
競合他社の求人票を5社分読み込み、技術要件の違いを分析する
GitHubの基本的な見方を学ぶ(リポジトリ、コミット履歴、スター数の意味)
この段階での成果物: 技術要素入りスカウトメールのテンプレート、書類選考の一次判断チェックリスト
Day 61〜90:応用・定着
目標:カジュアル面談で技術的な会話ができ、候補者の技術レベルを大まかに判断できる
やること:
社内のスプリントレビューに月1回参加する
エンジニア向けイベント(勉強会、カンファレンス)に1回以上参加する
カジュアル面談で自社の技術環境を5分で説明する練習をする
ChatGPTなどのAIツールを活用し、わからない技術用語をその場で調べる習慣をつける
自社のエンジニアブログ(あれば)を全記事読む
この段階での成果物: 自社技術環境の5分プレゼン資料、技術用語メモ帳(随時追加)
90日後の次のステップ
90日で土台ができたら、さらにレベルアップするために以下に取り組みましょう。
Progateなどのオンライン学習サービスで基礎的なプログラミングを体験する:コードを書く必要はないが、「プログラミングとはどういう作業か」を体感することで理解が深まる
採用に関わるエンジニアへのフィードバック収集:「面談で人事が伝えた技術情報は正確でしたか?」
技術トレンドのキャッチアップ:Publickey、はてなブックマーク(テクノロジーカテゴリ)、Zennなどのメディアを週1回チェック
よくある失敗パターンと対策
技術リテラシーを高める過程で、非エンジニア人事が陥りやすい4つの失敗があります。
中途半端な知識をひけらかす(にわかエンジニア化) → 人事の役割は専門家になることではなく橋渡し。知らないことは正直に聞き、深い議論は現場に任せる
特定技術に偏って判断する → React・Vue.js・SvelteはいずれもJavaScript系フロントエンド。上位概念で括ると視野が広がり、不当な除外を防げる
現場の希望をそのまま要件にする → 「その技術がないと業務が回りませんか?入社後にキャッチアップ可能ですか?」と確認し、MUST/WANTを切り分ける
技術トレンドを追いすぎて本質を見失う → 重要なのは「特定技術を知っているか」より「新しい技術をキャッチアップする力があるか」。学習能力は特定の経験以上に長期的価値がある
FAQ(よくある質問)
Q1. プログラミングを学んだほうがいいですか?
業務として必須ではありませんが、体験する価値はあります。ProgateやUdemyで数時間HTML/CSSを触ってみるだけでも、「コードを書くとはどういう作業か」が実感できます。ただし、人事がプログラミングスキルを高める必要はありません。目的は「エンジニアの仕事を理解すること」であり、「エンジニアになること」ではありません。
Q2. エンジニアの技術レベルを人事が判断できるようになりますか?
細かい技術力の判断は難しいですが、「経歴の一貫性」「技術キーワードの組み合わせが妥当か」「プロジェクト規模の大きさ」などから、大まかなレベル感を掴むことは可能です。例えば「3年目でマイクロサービスの設計からデプロイまで一人で担当していた」という経歴は、かなりレベルが高い可能性を示唆します。
Q3. ChatGPTなどのAIを活用して技術を勉強するのはアリですか?
非常に有効です。「ReactとVue.jsの違いを非エンジニアにもわかるように説明してください」のような質問をすると、わかりやすい回答が得られます。スカウトメールの技術的な記述のチェックにも使えます。ただし、AIの回答を鵜呑みにせず、社内エンジニアにも確認するようにしましょう。
Q4. 少人数のスタートアップで、エンジニアが採用に協力してくれません。どうすればいいですか?
まず、エンジニアの採用協力にかかる工数を最小化する工夫をしましょう。「書類選考は人事が一次フィルタをかけてから現場に回す」「面接は週1枠に限定する」など。また、「どんなスキルの人と一緒に働きたいか」を最初にヒアリングしてペルソナを固めておけば、都度相談する頻度を減らせます。エンジニアの採用協力は「お願い」ではなく、「一緒に良いチームを作る共同作業」として位置づけることが大切です。
Q5. 技術トレンドの変化が速すぎて追いつけません。何を優先すべきですか?
すべてのトレンドを追う必要はありません。優先すべきは「自社の技術スタックに直接関係する技術の動向」と「採用市場で求職者が注目している技術」の2点です。週に15分、Publickey(IT系ニュースサイト)やZenn(エンジニア向けナレッジ共有プラットフォーム)のトレンド記事を眺めるだけで十分です。
Q6. エンジニアの経歴書で「技術が古い」かどうかをどう判断しますか?
技術の新旧だけで判断するのは危険です。Javaは「古い」と思われがちですが、金融系や大規模システムでは現役の主力技術です。判断のポイントは、候補者が「同じ技術だけを長期間使い続けている」のか、「環境に合わせて技術を選択してきた」のかです。後者なら新しい技術への適応力が期待できます。
Q7. 技術面接に同席したほうがいいですか?
可能であれば同席を推奨します。技術的な内容が理解できなくても、候補者の受け答えの仕方、質問への向き合い方、コミュニケーションスタイルなどを観察できます。また、面接後に現場エンジニアと「あの技術的な議論はどういう意味だったのか」を振り返ることで、技術理解が深まります。
まとめ:技術を「知ろうとする姿勢」が採用力になる
エンジニア採用で成果を出すために、人事がプログラミングの専門家になる必要はありません。大切なのは、エンジニアの仕事・思考・文化を理解し、その理解を採用活動に反映させることです。
今日からできるアクション:
自社のCTOまたはリードエンジニアに「技術スタック解説」の30分ミーティングを依頼する
自社の技術スタック一覧表を作成する
今週中に現場エンジニア1名と15分の1on1を設定する
90日後には、「この人事はエンジニアのことをちゃんと理解している」と候補者から信頼される採用担当者になっているはずです。
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