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Tips エンジニア採用のヒント

updated_at: 2026/4/6

エンジニア採用のカウンターオファー対策|内定辞退を防ぐ実践ガイド

カウンターオファーによるエンジニア内定辞退を防ぐ具体的な予防策と対処法を徹底解説

tip Image

TL;DR(この記事の要約)

  • カウンターオファー(現職による引き止め)はエンジニア採用における内定辞退の主要因の一つ

  • カウンターオファーの成功率は約24%だが、エンジニア職種では年収提示が大きくなりやすく影響が大きい

  • 対策の本質は「オファー後の対応」ではなく、選考プロセス全体を通じた候補者との信頼構築

  • カウンターオファーを受けても揺るがない「転職理由の言語化」を選考中に支援することが最も効果的

  • 年収だけの勝負に持ち込まれないよう、技術環境・成長機会・裁量の具体性で差別化する


このページでわかること

Live Collaboration Illustration

エンジニア採用で内定を出した後、候補者が現職からカウンターオファー(引き止め交渉)を受けて辞退する——。

採用担当者にとって、これほど消耗するシナリオはありません。数ヶ月かけた選考プロセス、現場エンジニアの面接工数、そしてプロジェクトの要員計画。すべてが白紙に戻ります。

しかし、カウンターオファーによる辞退は「防げない事故」ではなく、選考プロセスの設計次第で大幅にリスクを下げられる課題です。

このページでは以下を解説します。

  • カウンターオファーの仕組みと、エンジニア採用で頻発する理由

  • 選考段階から始める「カウンターオファー耐性」の作り方

  • カウンターオファーが発生した際の具体的な対処フロー

  • 年収勝負に持ち込まれないための差別化戦略

  • 実際に使えるトークスクリプトとチェックリスト


カウンターオファーとは何か|エンジニア採用で頻発する背景

カウンターオファーの基本

カウンターオファーとは、退職意思を示した社員に対して現職企業が提示する引き止め条件のことです。一般的には以下のような内容が含まれます。

  • 年収の引き上げ(昇給・特別手当の付与)

  • 役職やポジションの変更(昇進・リーダー任命)

  • 業務内容の変更(希望プロジェクトへの異動)

  • 働き方の柔軟化(リモートワーク許可・フレックス拡大)

エン・ジャパンの調査によると、カウンターオファーで最も多い条件は「異動」(37%)、次いで「昇給」(21%)です(出典:エン転職コンサルタント「カウンターオファー」調査)。

なぜエンジニア採用でカウンターオファーが多いのか

エンジニア職種でカウンターオファーが頻発する背景には、構造的な理由があります。

1. 人材の希少性が高い

エンジニアの有効求人倍率は全職種平均の2〜3倍に達することがあり、企業にとってエンジニアの退職は「代わりが見つからない」直接的なリスクです。そのため、現職側も強力な条件を出して引き止めに動きます。

2. 年収レンジの幅が大きい

エンジニア職種は同じスキルセットでも企業によって年収差が数百万円になることがあります。現職企業が「市場価格に合わせる」名目で大幅な昇給を提示しやすい構造です。

3. 退職の影響が即座に出る

エンジニアは属人性の高い技術知識を持っていることが多く、退職されるとプロジェクトの遅延や障害対応のリスクに直結します。マネージャー層にとって「なんとしても引き止めたい」インセンティブが強いのです。

4. 転職活動が見えにくい

エンジニアの転職活動はオンライン完結で進むことが多く、現職側が気づいた時には内定が出た段階というケースが大半です。退職届を出されてから慌ててカウンターオファーを出すパターンが多くなります。

5. 複数社同時選考が当たり前

エンジニアの転職活動では、3〜5社に同時に応募するのが一般的です。複数の内定を持っている候補者に対して、現職が「それなら当社もこの条件を出す」とカウンターオファーを提示すると、候補者にとって選択肢がさらに増えることになります。結果として、採用企業は「現職」と「他の転職先候補」の両方と競争するという複雑な構図に巻き込まれます。

エンジニア職種特有のカウンターオファーパターン

エンジニアに対するカウンターオファーには、他の職種ではあまり見られない特有のパターンがあります。

技術系カウンターオファー

  • 「次のプロジェクトで希望の技術スタックを採用する」

  • 「テックリード/アーキテクトのポジションを新設する」

  • 「OSS活動やカンファレンス登壇に業務時間の20%を使ってよい」

  • 「技術ブログ執筆を評価制度に組み込む」

働き方系カウンターオファー

  • 「フルリモートに切り替える」

  • 「フレックスコアタイムを撤廃する」

  • 「副業を全面解禁する」

  • 「海外からのリモートワークを許可する」

キャリア系カウンターオファー

  • 「マネジメントではなくICトラックを整備する」

  • 「新規事業の立ち上げメンバーに抜擢する」

  • 「CTO直下のポジションに異動させる」

  • 「外部研修・大学院への通学を会社負担で支援する」

これらのパターンを事前に把握しておくことで、候補者からカウンターオファーの内容を聞いた際に、適切な対応を素早く判断できます。


カウンターオファーの実態|数字で見る影響と結末

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カウンターオファーの成功率

エン転職コンサルタントの調査によると、カウンターオファーが退職を思いとどまらせる確率は**約24%**です(出典:エン・ジャパン「カウンターオファー」調査)。

つまり、4人に3人はカウンターオファーを受けても予定通り転職しています。しかし採用企業から見ると、4人に1人は引き止めに成功するということでもあり、無視できない割合です。

カウンターオファー受け入れ後の現実

見落とされがちなのが、カウンターオファーを受け入れた人材のその後です。

  • カウンターオファーを受け入れた人材の約39%が1年以内に再び転職活動を開始している

  • 一度退職意思を示した社員は、上司やチーム内での信頼関係にヒビが入るケースが多い

  • 昇給で引き止められた場合、「退職をちらつかせれば給料が上がる」という認識が組織内に広がるリスクがある

これは採用企業にとって重要な情報です。カウンターオファーで残留した人材は、中長期的には再び市場に出てくる可能性が高いということを意味します。

なぜカウンターオファーで残留しても長続きしないのでしょうか。理由はシンプルです。多くの場合、カウンターオファーは「退職を防ぐための応急処置」であり、候補者が転職を考えた根本的な原因を解決するものではないからです。年収が上がっても、チームの文化や事業の方向性、成長機会の不足といった構造的な問題は変わりません。

さらに、退職意思を表明した社員は「いつ辞めるかわからない人」というレッテルを貼られがちです。重要なプロジェクトへのアサインが見送られたり、昇進の候補から外れたりすることもあります。結果として、カウンターオファーで残留した社員の不満は再び蓄積し、次の転職活動へとつながるのです。

採用企業が被る損失

カウンターオファーで内定辞退が発生した場合、以下の損失が発生します。

損失カテゴリ

具体的な影響

直接コスト

エージェントフィー、スカウト媒体費用の無駄(1人あたり100〜300万円規模)

面接工数

現場エンジニア・EM・CTOの面接時間(1候補者あたり合計5〜15時間)

機会損失

プロジェクト開始の遅延、残りの候補者が他社に流れるリスク

チームへの影響

「入社予定者がいる」前提で組んだ計画の白紙化

採用チームの疲弊

モチベーション低下、選考フローの再実施による工数


選考プロセスで「カウンターオファー耐性」を作る5つの方法

カウンターオファー対策は、内定を出した後に始めるのでは遅すぎます。選考プロセス全体を通じて、候補者の転職意思を固め、自社への期待を高めていくことが本質的な対策です。

1. 初期段階で「転職理由の深掘り」を行う

カジュアル面談や一次面接の段階で、候補者の転職理由を丁寧に深掘りしましょう。ポイントは「なぜ転職したいのか」だけでなく、**「現職で解決できない理由は何か」**まで掘り下げることです。

具体的な質問例を示します。

  • 「今の環境で一番変えたいことは何ですか?」

  • 「それを現職で改善しようとしたことはありますか?結果はどうでしたか?」

  • 「仮に現職から条件改善の提案があった場合、それで解決しますか?」

3つ目の質問は直接的ですが、早い段階でカウンターオファーの可能性を候補者自身に考えさせる効果があります。「年収が上がれば解決する」という回答なら、その候補者はカウンターオファーリスクが高いと判断できます。

一方、「技術選定の裁量がない」「チームの文化が合わない」「事業の方向性に共感できない」といった回答であれば、年収アップだけでは引き止められにくい候補者です。

2. 選考を通じて「自社でしか得られない体験」を提供する

面接は「候補者を評価する場」であると同時に、**「候補者に自社の魅力を体験させる場」**でもあります。

カウンターオファーに勝てる選考体験とは、具体的には以下のようなものです。

  • 現場エンジニアとの技術ディスカッション: 実際のアーキテクチャ図を見せながら技術課題を議論する。候補者が「このチームで働きたい」と感じる体験を作る

  • チームメンバーとのカジュアルな交流: ランチやオンライン雑談で、チームの雰囲気を肌で感じてもらう

  • 実際のコードベースの一部を見せる: NDA締結の上で、開発環境やCI/CDパイプラインを紹介する。技術的な透明性は信頼につながる

  • 入社後のプロジェクトを具体的に説明する: 「入社後3ヶ月でこのプロジェクトに参画し、この技術課題に取り組んでもらう」まで伝える

現職企業は「今の環境を維持する」ことしかできません。自社でしか得られない新しい挑戦や成長機会を具体的に見せることが、カウンターオファーへの最大の防御になります。

3. 選考スピードを上げて「熱量」を維持する

選考に時間がかかりすぎると、候補者の転職意欲は徐々に冷めていきます。選考スピードの改善については「エンジニア採用リードタイム短縮ガイド」も参考にしてください。そして意欲が冷めた状態でカウンターオファーを受けると、「やっぱり今のままでいいか」と流れやすくなります。

目安として、以下のスケジュール感を推奨します。

フェーズ

推奨期間

書類選考〜一次面接

1週間以内

一次面接〜最終面接

2週間以内

最終面接〜内定通知

3営業日以内

内定通知〜承諾期限

1〜2週間

全体

3〜4週間以内

選考の合間に連絡が途切れないことも重要です。面接後の当日〜翌日にフィードバックを返す、次のステップのスケジュールを即座に提示するなど、候補者が「この企業は自分を本気で欲しいと思っている」と感じ続けられる状態を維持しましょう。

4. オファー面談で「比較軸」を整理する

内定を出す際、単に条件を提示するだけでは不十分です。候補者が意思決定するための比較軸を一緒に整理することが重要です。オファー面談の全体的な設計については「エンジニア採用のオファー面談完全ガイド」で解説しています。

オファー面談では以下のアジェンダを含めましょう。

  • 年収・待遇の詳細説明: 基本年収だけでなく、SO/RSU、昇給ペース、評価制度の仕組みまで

  • 入社後のキャリアパス: 1年後・3年後にどのようなポジション・スキルが想定されるか

  • 転職理由との紐付け: 「あなたが転職で実現したいことは○○でしたよね。当社ではそれをこう実現できます」と明確に接続する

  • 懸念点の洗い出し: 「意思決定にあたって不安な点はありますか?」と率直に聞く

特に重要なのが転職理由との紐付けです。選考初期に深掘りした転職理由を、オファー面談で改めて取り上げ、「当社であなたの課題は解決できる」と具体的に説明します。これにより、候補者の頭の中に「現職に残る理由」ではなく「転職する理由」が強く残ります。

5. 「カウンターオファーが来ること」を事前に伝える

意外に効果が高いのが、内定通知時に「現職からカウンターオファーが来る可能性がありますよ」と事前に伝えることです。

伝え方の例を示します。

「○○さんほどのスキルをお持ちの方であれば、退職を伝えた際に現職から引き止めの提案があるかもしれません。それは○○さんの市場価値の高さの表れなので、自然なことです。ただ、転職を考えた本質的な理由が、条件改善だけで解決するかどうかは冷静に考えていただければと思います。」

このアプローチには3つの効果があります。

  • 候補者がカウンターオファーを「想定内」として受け止められる(心理的な免疫を作る)

  • **「この企業は自分のことをよく理解している」**という信頼感の醸成

  • 候補者自身が転職理由を再確認するきっかけになる


カウンターオファーが発生した際の具体的な対処フロー

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事前の対策を講じていても、カウンターオファーが発生することはあります。その際の対処フローを整理します。

ステップ1:状況を正確に把握する

候補者から「現職から引き止めを受けている」と連絡が来た場合、まず焦らずに状況を把握します。

確認すべきポイントは以下です。

  • カウンターオファーの具体的な内容(年収、ポジション、業務内容の変更等)

  • 候補者がどの程度揺れているか(「少し迷っている」なのか「かなり心が動いている」のか)

  • 候補者の転職理由のうち、カウンターオファーで解決される要素はどれか

  • 意思決定のタイムライン(いつまでに回答が必要か)

このとき、候補者を責めたり、プレッシャーをかけたりしないことが絶対条件です。「そうなんですね。○○さんの価値が認められている証拠ですね」と受け止めた上で、冷静に話を聞きましょう。

ステップ2:転職理由に立ち戻る

カウンターオファーの多くは金銭的な条件改善が中心です。しかし、候補者が転職を考えた本質的な理由は、多くの場合お金だけではありません。

選考初期に深掘りした転職理由を改めて候補者と一緒に確認します。

「選考の際にお話しいただいた転職理由は○○でしたよね。カウンターオファーの内容で、その部分は解決しそうですか?」

この問いかけは、候補者が冷静に判断するための材料を提供するものです。決して誘導ではなく、候補者自身が納得のいく意思決定をするためのサポートとして行います。

ステップ3:自社の強みを再提示する(ただし押し売りしない)

カウンターオファーの内容を踏まえた上で、自社が提供できる価値を改めて伝えます。

ここで重要なのは、年収の上乗せ合戦に入らないことです。現職企業が年収を50万円上げてきたからといって、こちらも50万円上げる、というのは消耗戦であり、たとえ勝ったとしても「条件が良いから来た」候補者は、次にもっと良い条件が出れば去っていきます。

代わりに、以下のような「金銭以外の価値」を具体的に提示します。

  • 技術的成長: 「当社ではこの技術領域のプロジェクトに携われます。これは現職では得られない経験ではないですか?」

  • 裁量とインパクト: 「当社では○○の技術選定にダイレクトに関われます。プロダクトへの影響力は現職とは異なるレベルです」

  • チームとカルチャー: 「面接で○○さんが評価してくださったチームの雰囲気は、組織が変わらない限り維持されます」

  • キャリアの非連続な成長: 「現職での昇給は"今の延長線上の評価"です。当社での経験は、市場価値を非連続に高めるものになるはずです」

このステップで最も避けるべきは、現職企業の悪口を言うことです。「カウンターオファーを出すような会社は、普段あなたを正当に評価していないということですよ」といった言い方は、一見論理的に聞こえますが、候補者にとっては自分の所属組織を否定されたように感じます。現職を下げるのではなく、自社の価値を上げるアプローチに徹しましょう。

また、候補者の家族やパートナーの意見も意思決定に大きく影響することを忘れてはいけません。「ご家族と相談される際に、当社の待遇や働き方についてお伝えいただく資料をお送りしましょうか?」と提案するのも有効です。特にリモートワーク制度や安定性に関する情報は、家族の安心材料になります。

ステップ4:意思決定のデッドラインを設ける

カウンターオファーへの対応で最も避けるべきは、ずるずると回答期限が延びることです。

候補者の悩みに寄り添いつつも、以下のように期限を設定します。

「○○さんが十分に検討できる時間は確保したいと思います。○月○日までにご回答いただくことは可能でしょうか?その間に追加で確認したいことがあれば、いつでもご連絡ください。」

一般的に、カウンターオファーへの回答期限は追加で3〜5営業日が妥当です。それ以上延びる場合は、候補者の転職意欲が大幅に低下している可能性が高く、無理に引き止めるよりも次の候補者に切り替える判断も必要になります。

ステップ5:結果に関わらずプロフェッショナルに対応する

候補者がカウンターオファーを受け入れて辞退する場合もあります。その際に重要なのは、感情的にならず、プロフェッショナルな対応を維持することです。

「○○さんのご判断を尊重します。今回のご縁は実現しませんでしたが、将来的に状況が変わった際はぜひまたお話しさせてください。」

この対応には戦略的な意味があります。カウンターオファーを受け入れた人材の約39%が1年以内に再び転職活動を開始するというデータがあります。良い関係を維持しておけば、その際に真っ先に声をかけてもらえるポジションを確保できます。タレントプール管理の観点からも、辞退者との関係性は資産です。タレントプールの運用方法は「エンジニア採用タレントプール構築・運用ガイド」を参照してください。


年収勝負に持ち込まれないための差別化戦略

Startup Life Illustration

カウンターオファーの中心は多くの場合「年収アップ」です。年収だけの勝負に持ち込まれると、資金力のある大手企業に対してスタートアップや中小企業は不利になります。

年収以外の軸で「この会社に行く理由」を作れるかどうかが、カウンターオファー対策の本質です。

技術環境の具体性で差別化する

「モダンな技術スタックです」という抽象的な訴求では不十分です。以下の粒度で具体的に伝えましょう。

  • 使用言語・フレームワークのバージョンと移行計画

  • CI/CDパイプラインの構成とデプロイ頻度

  • コードレビューの文化と具体的なフロー

  • 技術的負債への取り組みと改善のロードマップ

  • エンジニアが技術選定に関与できる意思決定プロセス

現職企業が既知の技術環境であるのに対し、自社の技術環境を具体的かつ魅力的に見せることで、「ここで働いてみたい」という好奇心と期待を喚起できます。

成長機会の「解像度」を上げる

「成長できる環境です」も抽象的すぎます。候補者が実感できるレベルまで解像度を上げましょう。

  • 入社後3ヶ月で取り組むプロジェクトと期待される成果

  • 半年後・1年後に想定されるスキルの変化

  • 社内勉強会やカンファレンス登壇の実績と支援制度

  • 先輩エンジニアのキャリアパス実例(匿名でも可)

特にスタートアップでは、**「大手では得られない裁量と経験の密度」**を具体的なエピソードで伝えることが効果的です。「入社3ヶ月でインフラ基盤の設計をリードした」「半年でテックリードに昇格した」といった実例は、年収差を超える魅力になり得ます。

総報酬パッケージで考える

年収の額面だけでなく、**総報酬(Total Compensation)**で比較できるようにしましょう。報酬設計の詳細は「エンジニア採用で勝つための報酬設計と年収戦略の完全ガイド」で解説しています。

  • 基本年収 + 賞与

  • ストックオプション / RSU(想定価値を試算して提示)

  • リモートワーク制度(通勤時間の削減は金銭価値に換算可能)

  • 学習支援制度(書籍購入費、カンファレンス参加費、資格取得支援)

  • 副業許可(副業収入も含めたトータルの収入機会)

  • 福利厚生(住宅手当、家賃補助、健康支援)

「年収は現職の方が50万円高いが、SOの想定価値を含めると逆転する」「リモートワークで通勤時間がゼロになり、月40時間の自由時間が生まれる」といった多角的な比較ができる材料を候補者に渡すことが大切です。

総報酬の比較を視覚的にわかりやすくするために、以下のような比較表を候補者向けに作成することも効果的です。

比較項目

現職(推定)

当社オファー

備考

基本年収

700万円

650万円

差額▲50万円

賞与

年2回(2ヶ月分)

年2回(業績連動)

直近実績3ヶ月分

SO/RSU

なし

SO付与

4年ベスティング、想定時価○○万円相当

リモートワーク

週1回

フルリモート可

通勤時間月40時間削減

副業

禁止

許可

追加収入の機会

学習支援

なし

年30万円

書籍・カンファレンス・資格取得

このように数字で比較できる形にすることで、候補者が「年収の額面」だけで判断するのを防ぎ、総合的な価値で意思決定してもらえるようになります。

「人」で差別化する

最終的に、候補者の意思決定を左右するのは「人」であることが多いです。

  • 一緒に働くチームメンバーとの相性

  • 直属のマネージャーのリーダーシップスタイル

  • 経営者のビジョンへの共感

選考プロセスの中で、候補者が「この人たちと一緒に働きたい」と感じる接点を意図的に作りましょう。最終面接後のカジュアルディナー、チームメンバーとの1on1、CTOとの技術ディスカッションなど、公式な選考以外の接点が候補者のエンゲージメントを大きく高めます。

特にエンジニア採用では、「一緒に働くエンジニアの技術力と人柄」が決め手になるケースが非常に多いです。候補者が「この人から学びたい」「このチームなら楽しく開発できそう」と感じる体験を作れれば、年収で多少の差があっても「この環境に飛び込みたい」という気持ちが勝ちます。

逆に、面接で現場エンジニアとの接点がなく、人事担当者や経営者としか話していない場合、候補者は「実際のチームの雰囲気がわからない」という不安を抱えたまま意思決定することになります。その状態でカウンターオファーを受けると、「未知の環境」よりも「慣れた環境」を選びたくなるのは人間の心理として自然です。

採用ブランディングの長期的な効果

カウンターオファー対策を個別の候補者対応だけで終わらせるのではなく、採用ブランディングとして長期的に取り組むことも重要です。

テックブログの継続的な発信、エンジニアイベントでの登壇、OSS活動への貢献といった採用ブランディング施策は、候補者が「この会社のことを以前から知っていた」「この会社のエンジニアの記事を読んでいた」という状態を作り出します。このような候補者は、転職先として自社を能動的に選んでいるため、カウンターオファーに対する耐性が高くなります。


カウンターオファー対策に使えるトークスクリプト集

具体的な場面で使えるトークスクリプトを紹介します。そのまま使うのではなく、自社の状況や候補者の個性に合わせてアレンジしてください。

カジュアル面談・一次面接での質問

転職理由の深掘り

「転職を考え始めたきっかけを教えていただけますか?現職でそれを改善しようとされたことはありますか?」

カウンターオファーリスクの見極め

「仮に現職から大幅な年収アップやポジション変更を提案された場合、転職への意志は変わりますか?」

この質問は率直すぎると感じるかもしれませんが、お互いの時間を無駄にしないための誠実な確認です。候補者が「年収が上がれば残る」と答えた場合、その候補者への投資を続けるかどうかの判断材料になります。

内定通知時のカウンターオファー予告

「○○さんのスキルと経験を高く評価している企業は当社だけではないと思います。退職を伝えた際に、現職から条件改善の提案を受ける可能性があります。その際は、ぜひ『なぜ転職を決意したのか』という原点に立ち戻って考えていただければと思います。もちろん、迷うことがあればいつでもご相談ください。」

カウンターオファー発生時の対応

状況確認

「ご連絡ありがとうございます。現職からどのような提案を受けているか、差し支えなければ教えていただけますか?○○さんが最善の判断をするために、私たちもできる限りの情報提供をしたいと思っています。」

転職理由への立ち戻り

「選考の中でお話しいただいた、○○という課題は、今回の提案で解決しそうですか?年収は確かに大切な要素ですが、○○さんが転職で実現したかったことの本質はそこではなかったように記憶しています。」

プレッシャーをかけない回答期限の設定

「十分に検討していただく時間は必要だと思います。○月○日(○営業日後)をひとつの目安として、それまでにご判断いただけると助かります。追加で聞きたいことがあれば、現場エンジニアとの面談もセットできますので、遠慮なくおっしゃってください。」


カウンターオファーに弱い候補者の見極め方

すべての候補者にカウンターオファーのリスクがあるわけではありません。選考の早い段階で、カウンターオファーに揺れやすい候補者の特徴を把握し、対策の強度を調整しましょう。

カウンターオファーリスクが高いシグナル

  • 転職理由が「年収」に集中している: 年収アップが主な転職動機の場合、現職が同等以上の年収を提示すればそちらに流れる可能性が高い

  • 現職への不満が曖昧: 「なんとなく環境を変えたい」「新しいことに挑戦したい」程度の動機は、カウンターオファーで簡単に覆る

  • 転職活動が受動的: スカウトを受けて「なんとなく話を聞いてみた」というスタートの場合、自発的に転職を決意した候補者よりリスクが高い

  • 現職での在籍期間が短い: 入社して1〜2年程度の場合、現職側も「まだ戦力化の途上」として強く引き止める傾向がある

  • 退職経験がない(初めての転職): 退職という行為自体への心理的ハードルが高く、カウンターオファーを「残る理由」として受け入れやすい

カウンターオファーリスクが低いシグナル

  • 転職理由が構造的: 「事業ドメインを変えたい」「マネジメントではなくICとして深く技術に向き合いたい」など、現職の条件変更では解決しない理由

  • 転職活動が自発的: 自ら求人を探し、企業を選んで応募している

  • 現職の課題を具体的に言語化できている: 問題意識が明確で、「何を変えたいか」がクリアな候補者

  • 退職後のキャリアビジョンが明確: 「3年後にこうなりたいから、この経験が必要」と逆算で語れる候補者

リスクレベル別の対応方針

候補者のカウンターオファーリスクに応じて、対策の強度を変えることで効率的にリソースを配分できます。

リスクレベル

特徴

対応方針

高リスク

転職理由が年収中心、受動的な活動

選考早期に年収以外の動機を掘り下げる。動機が弱い場合は選考を慎重に進める

中リスク

複合的な転職理由だが、年収も重視

オファー面談で総報酬と成長機会を丁寧に説明。カウンターオファー予告を必ず実施

低リスク

構造的な転職理由、自発的な活動

標準的なフォロー。ただし油断は禁物で、承諾後も定期連絡を維持

リスク判定は面接官の個人的な感覚ではなく、上記のシグナルに基づいたチェックリスト形式で行うことで、判断のブレを減らせます。面接後の候補者情報共有の場で、「カウンターオファーリスク:高/中/低」を必ず記録し、後続の対応に活かしましょう。


組織として取り組むカウンターオファー対策

Dashboard Illustration

カウンターオファー対策は、個別の候補者への対応だけでなく、採用組織として仕組み化することで効果が高まります。

採用フローにカウンターオファー対策を組み込む

選考プロセスの各ステップに、カウンターオファー対策のアクションを標準として組み込みましょう。

選考ステップ

カウンターオファー対策アクション

カジュアル面談

転職理由の深掘り、カウンターオファーリスクの初期判断

一次面接

自社でしか得られない技術体験の提供

技術面接

入社後のプロジェクト・チームの具体的な説明

最終面接

経営者からのビジョン共有、キャリアパスの提示

オファー面談

転職理由との紐付け、総報酬の詳細説明

内定通知

カウンターオファー予告、相談窓口の明示

承諾待ち期間

定期的なフォロー、チームメンバーとの接点維持

承諾後〜入社日までのフォローを強化する

内定承諾後も油断は禁物です。入社日までの期間に現職から再度引き止めを受けるケースもあります。

  • 月1回程度のカジュアルな連絡: チームの近況、新しいプロジェクトの情報共有

  • 入社前のチームイベントへの招待: オンラインでも可。チームに溶け込む機会を作る

  • 入社後のオンボーディング計画の事前共有: 入社初日からのスケジュールを見せることで、期待を具体化する

  • PCや開発環境のセットアップ準備の連絡: 「あなたの入社を準備して待っている」というメッセージになる

辞退データを蓄積・分析する

カウンターオファーによる辞退が発生した場合、その都度データを記録し、パターンを分析しましょう。

  • 辞退者の転職理由の傾向

  • カウンターオファーの内容(年収、ポジション等)

  • 選考プロセスのどの段階でリスクのシグナルがあったか

  • 自社のオファー内容との差分

データが蓄積されれば、「この属性の候補者はカウンターオファーリスクが高い」「この選考ステップでのフォローが不足している」といった構造的な改善点が見えてきます。

EVP(従業員価値提案)を磨き上げる

カウンターオファー対策の根本的な解決策は、自社のEVP(Employee Value Proposition)を強化することです。EVPとは、「なぜこの会社で働くべきなのか」を明確に言語化したものであり、候補者が現職のカウンターオファーと比較する際の判断基準になります。

強いEVPを持つ企業は、カウンターオファーが発生しても候補者が「それでも転職したい理由」を自分の言葉で説明できます。なぜなら、選考プロセスを通じてEVPが候補者に伝わり、内面化されているからです。

EVPを構成する要素は一般的に以下の5つです。

  • 報酬・待遇: 年収、福利厚生、働き方の柔軟性

  • キャリア成長: スキルアップの機会、昇進のパス、学習文化

  • 仕事の意義: プロダクトの社会的インパクト、技術的なチャレンジ

  • 組織文化: チームの雰囲気、意思決定のスタイル、心理的安全性

  • 企業の将来性: 事業の成長性、市場でのポジション、経営者のビジョン

これらを自社の強みに基づいて具体的に言語化し、採用活動のあらゆる接点で一貫して伝えることが重要です。EVPの設計方法については「エンジニア採用EVP設計ガイド」で詳しく解説しています。

面接官のカウンターオファー対応力を鍛える

面接官がカウンターオファーの存在を意識せずに選考を進めてしまうと、対策が後手に回ります。面接官トレーニングの一環として、以下のポイントを共有しましょう。

  • 転職理由の深掘り方法: 表面的な回答で終わらせず、構造的な理由にたどり着くまで掘り下げるスキル

  • 自社の魅力を語る練習: 面接は評価だけでなく「アトラクト(魅力づけ)」の場であるという意識

  • カウンターオファーリスクの判定基準: 面接後にリスクレベルを共有するフローの徹底

  • 候補者への適切な情報開示: 技術環境・チーム構成・プロジェクト内容をどこまで開示するかの判断基準

面接官の「アトラクト力」が上がれば、候補者が選考プロセスを通じて自社への期待を高めていくため、カウンターオファーの影響を受けにくくなります。


FAQ(よくある質問)

Q. カウンターオファーに対抗して年収を引き上げるべきですか?

場合によります。候補者の市場価値に照らして当初のオファーが低かった場合は、調整の余地があります。ただし、カウンターオファーへの対抗という理由だけで年収を上げることは避けるべきです。その理由は2つあります。第一に「条件を吊り上げれば対応してくれる」という前例を作ってしまうこと。第二に、年収だけで決めた候補者は入社後の定着リスクも高いことです。年収以外の価値で勝負することを優先しましょう。

Q. 候補者が「迷っている」と言った時点で諦めるべきですか?

いいえ、すぐに諦める必要はありません。迷うこと自体は自然な反応です。重要なのは、迷いの原因が何かを正確に把握することです。年収差で迷っているのか、環境変化への不安で迷っているのか、家族の反対で迷っているのかによって対応は異なります。原因を把握した上で、対応可能なものには具体的に対処し、対応不可能なものについては候補者の判断を尊重しましょう。

Q. エージェント経由の候補者にはどう対応すべきですか?

エージェント経由の場合、エージェントをカウンターオファー対策のパートナーとして活用することが有効です。優秀なエージェントは候補者の転職理由を深く理解しており、カウンターオファーが発生した際に候補者を適切にサポートしてくれます。具体的には、エージェントに対して自社の魅力ポイントを詳しく共有しておくこと、カウンターオファーが発生した場合の連携フローを事前に合意しておくことが大切です。エージェント活用の全体像は「エンジニア採用の人材紹介エージェント活用ガイド」で解説しています。

Q. カウンターオファーを受け入れて辞退した候補者に、再度アプローチしても良いですか?

はい、適切なタイミングであれば再アプローチは有効です。カウンターオファーを受け入れた人材の一定割合は、1年以内に再び転職を検討するというデータがあります。辞退時に良い関係を維持しておけば、再度転職を考えた際に候補者から連絡が来ることもあります。3〜6ヶ月後にカジュアルな近況確認の連絡を入れるのは問題ありません。ただし、しつこいアプローチは逆効果です。

Q. スタートアップで年収が出せない場合、どうすればよいですか?

スタートアップの強みは、年収以外の部分にこそあります。技術選定の裁量、プロダクトへのインパクト、経営層との距離、ストックオプションの将来価値、成長スピードといった要素を具体的に訴求しましょう。特にストックオプションについては、現在の会社の評価額と想定される将来価値を具体的な数字で説明すると効果的です。また、「年収は確かに現職より低いが、2年後には市場価値がこれだけ上がる」というキャリアROIの視点を提示することも有効です。

Q. 退職交渉が長引いている候補者にはどう接すべきですか?

退職交渉の長期化はカウンターオファーの変形パターンです。候補者の退職交渉の状況を定期的に確認しつつ、過度に介入しないバランスが重要です。「退職交渉でお困りのことがあればご相談ください」と伝えつつ、週1回程度のペースでフォロー連絡を入れましょう。ただし、退職交渉が1ヶ月を超えて進展がない場合は、候補者の転職意欲を再確認する必要があります。

Q. 内定承諾後にカウンターオファーで辞退されることもありますか?

残念ながらあります。法的には内定承諾後でも候補者は辞退可能であり、入社日の2週間前までは撤回が認められています。承諾後の辞退を防ぐには、承諾〜入社日までの期間に継続的なエンゲージメントを維持することが重要です。チームイベントへの招待、入社準備の進捗共有、直属の上司からの定期的な連絡など、「もうこのチームの一員だ」と感じてもらう接点を作りましょう。


カウンターオファー対策チェックリスト

最後に、自社の採用プロセスにおけるカウンターオファー対策の状況を確認するためのチェックリストを掲載します。

選考段階

  • 初期面接で転職理由を十分に深掘りしているか

  • カウンターオファーリスクの高い候補者を識別できているか

  • 面接を通じて「自社でしか得られない体験」を提供しているか

  • 選考スピードが3〜4週間以内に収まっているか

  • 面接後のフィードバックを当日〜翌日に返しているか

オファー段階

  • オファー面談で転職理由と自社の提供価値を紐付けているか

  • 総報酬パッケージ(年収以外の要素含む)を詳細に説明しているか

  • カウンターオファーの可能性を事前に伝えているか

  • 具体的な入社後のプロジェクト・キャリアパスを提示しているか

  • 候補者の懸念点を率直に聞き出しているか

カウンターオファー発生時

  • 感情的にならず冷静に状況を把握できているか

  • 転職理由に立ち戻った会話ができているか

  • 年収の上乗せ合戦に入っていないか

  • 適切な回答期限を設定しているか

  • 辞退の場合もプロフェッショナルに対応できているか

組織体制

  • カウンターオファー対策が選考プロセスに組み込まれているか

  • 承諾後〜入社日のフォロー体制が整っているか

  • 辞退データを蓄積・分析しているか

  • エージェントとの連携フローが確立しているか


まとめ

カウンターオファーによるエンジニア内定辞退は、採用企業にとって大きな損失です。しかし、「運が悪かった」で片付けるべきものではありません。

本記事で解説した通り、カウンターオファー対策の本質は内定後の対応ではなく、選考プロセス全体を通じた候補者との関係構築にあります。

  • 選考初期から転職理由を深掘りし、候補者自身の意思決定の軸を明確にする

  • 自社でしか得られない技術体験・成長機会を具体的に見せる

  • 年収だけでなく、総報酬・キャリア・チームの魅力で差別化する

  • カウンターオファーの発生を想定し、事前に「心理的な免疫」を作る

  • 発生時は冷静に対処し、結果に関わらず関係を維持する

これらを採用プロセスに組み込むことで、カウンターオファーへの耐性を組織として高められます。

エンジニア採用のカウンターオファー対策でお悩みの方は、ぜひtechcellarにご相談ください。 採用コンサル営業出身の現役エンジニアが、候補者心理を踏まえた実践的な採用プロセスの改善をサポートします。

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