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Tips エンジニア採用のヒント

updated_at: 2026/4/8

非IT企業がエンジニア採用を成功させるDX人材獲得の実践ガイド

非IT企業がDX推進に必要なエンジニアを採用するための戦略・選考設計・定着施策を網羅的に解説

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TL;DR(この記事の要約)

  • 非IT企業のエンジニア採用は「技術力×事業理解」の掛け合わせを正しく定義するところから始まる

  • IT企業との採用競争で勝つには、事業インパクトの大きさ裁量の広さを訴求するのが鉄則

  • 求人票・選考フロー・面接官の技術リテラシーの3点を整備しないと、応募があっても採用には至らない

  • 外部パートナー(業務委託・RPO)と社内育成を組み合わせた「ハイブリッド人材戦略」がコスパ最強

  • 入社後のオンボーディングと技術的裁量の確保が定着率を決める最大のポイント

このページでわかること

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この記事では、IT企業以外の事業会社(製造業・小売・金融・物流など)がエンジニアを採用するための具体的な戦略と実践手法を解説します。

  • 非IT企業がエンジニア採用で苦戦する構造的な理由

  • IT企業に勝てる「自社ならでは」の訴求ポイントの見つけ方

  • 求人票・選考フロー・面接体制の設計方法

  • 採用と社内育成を組み合わせたハイブリッド戦略

  • 入社後の定着率を高めるオンボーディングと環境整備

「DXを推進したいが、エンジニアが採れない」「求人を出しても応募が来ない」という課題を抱える企業の採用担当者・経営者の方に向けた内容です。

1. なぜ非IT企業のエンジニア採用は難しいのか

IT人材不足の構造的な背景

経済産業省の「IT人材需給に関する調査」(2019年公表)では、2030年に最大約79万人のIT人材が不足すると推計されています。この数字は「高位シナリオ」の試算ですが、中位シナリオでも約45万人の不足が見込まれており、需給ギャップは年々拡大傾向にあります。

出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査」

IPAの「DX動向2024」では、DX推進人材について58.5%の企業が「大幅に不足している」と回答しています。さらに、約4割の企業が「どのような人材が必要なのかを明確化できていない」状態にあるとも指摘されています。

出典: IPA「DX動向2024 - 深刻化するDX推進人材不足と課題」

非IT企業が抱える「5つの構造的ハンデ」

エンジニアの転職市場では、IT企業やメガベンチャーに候補者が集中しがちです。非IT企業が苦戦する理由には、次のような構造的な要因があります。

1. 技術ブランドの弱さ

テックブログやOSS活動、技術カンファレンスでの登壇実績など、エンジニアが「この会社の技術に興味がある」と感じる接点が少ない。そもそもエンジニア組織が小さいため、技術的な情報発信が難しい。

2. キャリアパスの不透明さ

「エンジニアが社内でどう成長できるのか」が見えにくい。マネジメントポジションはあっても、技術スペシャリストとしてのキャリアラダーが整備されていないケースが多い。

3. 年収レンジの乖離

IT企業と比較して、非IT企業のエンジニア年収レンジは低く設定されがちです。「社内の他職種との公平性」を理由に、市場相場から離れた報酬テーブルになっていることが少なくありません。

4. 開発環境・技術スタックの魅力不足

レガシーシステムの保守が主な業務だと認識されやすく、モダンな技術を使いたいエンジニアにとっては選択肢に入りにくい。

5. 選考プロセスの設計不足

技術面接のノウハウが社内にない。人事主導の面接では技術力を正しく評価できず、候補者側にも「この会社で技術的に成長できるのか」という不安を与えてしまう。

「IT企業じゃないから無理」は思い込み

こうした構造的なハンデはあるものの、非IT企業だからこそ持つ強みもあります。次のセクションで詳しく解説しますが、結論を先に言えば「事業の手触り感」「裁量の広さ」「ゼロイチで技術組織を作れる面白さ」は、IT企業では得にくい魅力です。

重要なのは、ハンデを認識した上で、自社の強みを正しく言語化し、適切なチャネルで届けること。「エンジニアが来ない」のではなく、「届いていない」だけの場合がほとんどです。

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2. 非IT企業がIT企業に勝てる「訴求ポイント」の作り方

事業インパクトの大きさを伝える

IT企業のエンジニアは、多くの場合「プロダクトの一部分」を担当します。一方、非IT企業のDX部門では、事業全体を変えるプロジェクトに関われるケースが多い。

例えば、次のような訴求が効果的です。

  • 「あなたが作るシステムで、工場の生産性が変わる」

  • 「全国500店舗の業務フローを、あなたの設計で刷新する」

  • 「経営層と直接やりとりしながら、事業の根幹に関わるシステムを構築する」

エンジニアにとって「自分の仕事が事業にどう影響するか」が見えることは、大きな動機づけになります。

裁量と技術選定の自由度

非IT企業のDX部門は、エンジニア組織が小さいからこそ一人ひとりの裁量が大きいのが特徴です。

  • 技術スタックをゼロから選定できる

  • アーキテクチャの意思決定に直接関われる

  • 「この技術を使いたい」が通りやすい

IT企業の大規模組織では、技術選定は上位レイヤーで決まっていることが多く、個人の裁量は限定的です。この違いは、特にシニアエンジニアや「自分で決めて動きたい」タイプのエンジニアにとって大きな魅力になります。

「ドメイン知識 × エンジニアリング」の希少価値

非IT企業で働くエンジニアは、業界固有のドメイン知識を獲得できます。これは転職市場でも非常に価値が高い。

  • 製造業のサプライチェーンに精通したエンジニア

  • 金融規制を理解した上でシステム設計ができるエンジニア

  • 物流のオペレーションを最適化できるエンジニア

「技術力だけでは差別化しにくいが、ドメイン知識を掛け合わせることで希少人材になれる」というキャリアストーリーは、中長期的なキャリアを考えるエンジニアに刺さります。

EVP(従業員価値提案)の設計ステップ

非IT企業がエンジニア向けのEVPを設計するには、以下の3ステップが有効です。

  1. 棚卸し: 自社がエンジニアに提供できる価値をリストアップする(裁量・技術選定・事業インパクト・ワークライフバランス・福利厚生など)

  2. 差別化ポイントの特定: IT企業と比較して「うちだからこそ」と言えるポイントを3つに絞る

  3. 言語化とチャネル設計: 求人票・スカウトメール・採用ページ・カジュアル面談で一貫して伝える

ポイントは、IT企業と同じ土俵で戦わないこと。年収や技術スタックのモダンさで勝負するのではなく、「この会社でしかできない体験」を軸に訴求するのが正攻法です。

EVPの設計方法について詳しくは「エンジニア採用EVP設計ガイド|選ばれる企業の価値提案の作り方」で解説しています。

3. 求人票・選考フロー・面接体制の設計

エンジニアに刺さる求人票の書き方

非IT企業の求人票でエンジニアが離脱するポイントは、実はパターンが決まっています。

よくあるNG例:

  • 「社内SE募集」というタイトルで、業務内容がベンダー管理のみ

  • 技術スタックの記載がない、または「Excel」「Access」がメイン

  • 年収レンジが非公開

  • 「未経験歓迎」と「即戦力募集」が混在している

改善のポイント:

項目

NG例

改善例

職種名

社内SE

DXエンジニア / バックエンドエンジニア

技術スタック

記載なし

Python, AWS, Terraform, React(新規導入検討中を含む)

ミッション

システムの保守運用

基幹システムのモダナイゼーションと新規プロダクト開発

年収

応相談

600万〜900万(経験・スキルにより決定)

開発体制

記載なし

内製チーム5名、スクラム開発、週1リリース

求人票は「募集要項」ではなく「候補者への提案書」と考えましょう。その求人票を読んだエンジニアが「話を聞いてみたい」と感じるかどうかが全てです。求人票の書き方を詳しく知りたい方は「エンジニアが応募したくなる求人票(JD)の書き方完全ガイド」も参考にしてください。

選考フローの設計

非IT企業でありがちな失敗は、一般的な中途採用と同じ選考フローをエンジニア採用に適用してしまうことです。

推奨する選考フロー:

  1. カジュアル面談(30分): 技術責任者が対応。事業課題と技術的チャレンジを共有

  2. 技術面接(60分): 過去のプロジェクト深掘り + 技術的なディスカッション

  3. ワークサンプルまたはコーディング課題(必要に応じて): 実際の業務に近い課題を出題

  4. オファー面談(30分): 条件提示と入社後のキャリアパス説明

設計のポイント:

  • 選考期間は最長2週間以内に収める。3週間以上かかると辞退率が急上昇する

  • 面接回数は3回以内。非IT企業にありがちな「役員面接→部長面接→人事面接」の多段階面接はエンジニア候補者に敬遠される

  • 技術面接には必ずエンジニアが同席する。人事だけの面接では技術力の見極めができないだけでなく、候補者の志望度も下がる

面接官の技術リテラシー向上

社内にエンジニアが少ない、またはいない場合、面接官の技術リテラシーが課題になります。

すぐにできる対策:

  • 外部のエンジニアに面接官として参加してもらう(業務委託・顧問エンジニア)

  • 人事担当者向けに「エンジニア採用のための技術基礎研修」を実施する

  • 面接時の質問テンプレートを技術者と一緒に作成する

中長期的な対策:

  • 採用担当にエンジニア経験者を配置する

  • 社内のエンジニアを面接官として育成する(面接官トレーニング)

  • 技術顧問を採用し、選考プロセス全体を監修してもらう

面接の場は「選考する場」であると同時に「候補者に選ばれる場」でもあります。技術的な会話ができない面接は、候補者にとって「この会社にエンジニアの居場所はなさそう」というシグナルになってしまいます。非エンジニアの人事担当者が技術リテラシーを身につける方法については「非エンジニア人事の技術リテラシー入門|採用力を高める実践ガイド」で詳しく解説しています。

4. 採用チャネル戦略|非IT企業に効く手法

ダイレクトスカウトを軸にする

非IT企業の求人は、転職サイトに掲載しても埋もれがちです。IT企業の大量の求人に紛れて、候補者の目に留まりにくい。

そのため、ダイレクトスカウトを採用の主軸に据えることを推奨します。

  • BizReach: ハイクラス層への接触に強い。年収レンジが高い非IT企業のDX部門責任者候補などに有効

  • Forkwell: エンジニア特化。技術スタックでフィルタリングできるため、ミスマッチが少ない

  • LAPRAS: GitHubやQiitaの活動からエンジニアの技術力を可視化。技術ブランドが弱い企業でもスカウトの精度を上げやすい

  • Green: IT/Web業界の転職に強いが、非IT企業のDXポジションにも対応

スカウトメール作成のポイントは、「なぜあなたなのか」を具体的に伝えることです。テンプレート送信は返信率が低い。候補者のGitHubやブログを読んだ上で、「あなたのこのスキルが、うちのこの課題に活きる」と具体的に書くことで返信率は大きく変わります。

リファラル採用の活用

社内にエンジニアが1人でもいるなら、リファラル採用は最もコストパフォーマンスの高い手法です。

  • エンジニアのコミュニティは意外と狭い。1人のエンジニアから数珠つなぎで候補者が見つかることも多い

  • リファラル経由の候補者は、企業文化や業務内容をある程度理解した上で応募してくるため、ミスマッチが少ない

  • リファラルインセンティブ(紹介報酬)を適切に設定する。一般的には20万〜50万円程度

技術イベント・勉強会への参加

自社主催が難しくても、既存の技術コミュニティに参加することで接点を作れます。

  • 業界特化のテックイベント(製造業×IoT、物流×データ分析など)に参加・登壇する

  • 社内のDXプロジェクトの取り組みをテックブログで発信する

  • 技術カンファレンスにスポンサーとして参加し、ブースでエンジニアと直接話す

非IT企業の技術発信は、IT企業に比べて競合が少ないのがメリットです。「製造業のDXエンジニアが語る」というコンテンツは希少性が高く、エンジニアの注目を集めやすい。

人材紹介エージェントの活用

エージェント選びでは、エンジニア採用に特化した実績があるかどうかを確認しましょう。

  • 非IT企業のエンジニア採用実績があるエージェントを選ぶ

  • 担当者がエンジニアの業務内容を理解しているかを面談で確認する

  • 「ただ候補者を紹介してくれる」だけでなく、求人内容のブラッシュアップや候補者への動機づけまでサポートしてくれるエージェントがベスト

エージェントに丸投げするのではなく、自社の魅力を言語化して共有し、エージェントと一緒に候補者を口説くスタンスが成功の鍵です。

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5. ハイブリッド人材戦略|外部採用 × 社内育成の最適解

なぜ「採用だけ」では限界があるのか

前述の通り、IT人材の需給ギャップは拡大の一途です。すべてのDX人材を外部採用でまかなおうとすると、以下の問題に直面します。

  • 採用コストの高騰(エンジニア1名の採用コストは一般的に100万〜300万円)

  • 採用リードタイムの長期化(優秀なエンジニアほど転職市場に滞在する期間が短い)

  • 入社後のカルチャーフィットの不確実性

だからこそ、**外部採用と社内育成を組み合わせた「ハイブリッド戦略」**が現実的な解になります。

3つの人材レイヤーと調達方法

DXに必要な人材を3つのレイヤーに分けて、それぞれ最適な調達方法を設計します。

レイヤー1: テックリード / アーキテクト(外部採用)

  • 技術選定・アーキテクチャ設計をリードする最上位レイヤー

  • 市場から正社員として採用するのが理想だが、難易度が高い

  • 代替手段: 技術顧問(業務委託)として関わってもらい、段階的に正社員への転換を打診する

レイヤー2: ミドルエンジニア(外部採用 + 業務委託)

  • 実装力のある中核メンバー

  • 正社員採用と並行して、業務委託エンジニアに参画してもらい、チームの開発力を確保する

  • 業務委託から正社員に転換する「トライハイヤー」モデルも有効

レイヤー3: ジュニア / DX人材(社内育成 + ポテンシャル採用)

  • 社内の非エンジニア人材をリスキリングしてDX人材に転換する

  • ポテンシャル採用で未経験〜微経験のエンジニアを採用し、社内で育成する

  • このレイヤーは育成コストがかかるが、ドメイン知識を最初から持っているのが最大の強み

社内育成(リスキリング)の実践ステップ

社内の非エンジニア人材をDX人材に転換するリスキリングは、以下のステップで進めます。

ステップ1: 候補者の選定

  • 業務でデータ分析やツール活用に積極的な社員を候補にする

  • 本人の意志が最も重要。「会社の命令」ではなく「自分のキャリア選択」として取り組める環境を作る

ステップ2: 育成プログラムの設計

  • 外部の研修サービスを活用する(Udemy Business、Progate、Tech Academyなど)

  • 社内のDXプロジェクトにOJTとして参画させる

  • メンターとして外部のエンジニア(業務委託)をアサインする

ステップ3: 段階的なスキルアップ

フェーズ

期間目安

到達レベル

基礎学習

1〜3か月

プログラミング基礎、SQL、Gitの操作

実践OJT

3〜6か月

社内ツールの開発・改修ができる

自立

6〜12か月

小規模プロジェクトをリードできる

業務委託エンジニアの活用ポイント

業務委託エンジニアは「人手が足りないから」だけでなく、**社内のエンジニアリング文化を立ち上げるための「触媒」**として活用するのが賢い使い方です。

  • コードレビューの文化を持ち込んでもらう

  • 開発プロセス(CI/CD、テスト自動化など)の整備を主導してもらう

  • 社内メンバーへのペアプログラミング・メンタリングを依頼する

「外注先」ではなく「チームメンバー」として迎え入れる姿勢が、業務委託エンジニアの定着とパフォーマンスを左右します。業務委託エンジニアの活用戦略については「副業・業務委託エンジニアの活用で採用力を強化する完全ガイド」も参照してください。

6. オンボーディングと定着|入社後に差がつくポイント

非IT企業特有のオンボーディング課題

エンジニアが非IT企業に入社した直後に感じやすい不安やストレスには、IT企業とは異なる独特の傾向があります。

  • 「エンジニアが自分だけ」の孤独感: 技術的な相談相手がいない、コードレビューの相手がいない

  • 社内のITリテラシーとのギャップ: エンジニアにとって当たり前のツールや概念が社内で通じない

  • 成果の評価基準が不明確: 「どう評価されるのか」がわからず不安になる

  • 意思決定スピードの遅さ: IT企業のアジャイルな意思決定に慣れていると、稟議文化にフラストレーションを感じる

90日オンボーディングプラン

入社から90日間で以下のマイルストーンを設定することを推奨します。

Week 1-2: インプット期

  • 事業理解研修(業界構造・自社のビジネスモデル・顧客課題)

  • 既存システムのアーキテクチャ説明

  • 開発環境のセットアップとドキュメント整備

  • キーパーソン(経営層・事業部長・現場リーダー)との1on1

Week 3-4: スモールウィン期

  • 小さな改善タスクに取り組む(既存システムのバグ修正、ちょっとした機能追加など)

  • 「1つ成果を出す」ことで、本人の自信と社内の信頼を獲得する

  • 事業部門との定例ミーティングに参加し始める

Month 2: プロジェクト始動期

  • 中規模のプロジェクトにアサインする

  • 技術選定や設計に関する意思決定に参画してもらう

  • 社外エンジニアコミュニティへの参加を奨励する

Month 3: 定着確認期

  • 本人との振り返り面談を実施する

  • 「入社前に聞いていた話と違う」ポイントがないか確認する

  • 今後のキャリアパスと期待値をすり合わせる

エンジニアが定着する環境づくり

技術的裁量の確保

  • 技術選定をエンジニアに任せる。「上が決めた技術を使え」では定着しない

  • 20%ルールや技術負債返済の時間を公式に確保する

  • 外部カンファレンスへの参加費・学習費を会社が負担する

評価制度の整備

  • エンジニア専用の評価軸を設ける(コード品質・アーキテクチャ設計・技術的意思決定など)

  • 他職種と同じ評価制度をそのまま適用しない

  • 技術スペシャリストとしてのキャリアラダーを用意する(マネジメント一本道にしない)

コミュニティ形成

  • 社内に2人以上のエンジニアがいる場合は、定期的な技術共有会を実施する

  • 1人エンジニアの場合は、外部コミュニティへの参加を積極的に支援する

  • 社外のエンジニアとの交流機会(勉強会・もくもく会など)を業務時間内に認める

エンジニアの離職理由の上位には「技術的な成長が見込めない」「孤独感」「評価されていると感じない」が挙がることが多いです。非IT企業ではこれらのリスクが構造的に高いため、意識的に対策を打つ必要があります。オンボーディングの詳細は「エンジニアのオンボーディング完全ガイド」、リテンション施策は「エンジニアの離職を防ぐ!定着率を高めるリテンション実践ガイド」でも解説しています。

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7. DX推進フェーズ別の採用戦略

フェーズ0: DX構想段階(エンジニア0人)

最優先アクション:

  • 技術顧問を1名確保する(業務委託で月20〜40時間程度)

  • 技術顧問と一緒に、DXのロードマップと必要な技術人材像を定義する

  • 並行して採用活動を開始する

この段階でやりがちな失敗:

  • 「まずSIerに外注して、軌道に乗ったら内製化しよう」→ ベンダーロックインが進み、内製化のハードルが上がる

  • 「CTOを採用しよう」→ 候補者が極めて限られる。技術顧問から段階的に関係を構築するほうが現実的。1人目エンジニア採用のノウハウは「非エンジニア創業者のための1人目エンジニア採用実践ガイド」を参照

  • 「とりあえず求人を出そう」→ 技術的な要件が曖昧なまま求人を出しても、ミスマッチが起きる

フェーズ1: DX立ち上げ期(エンジニア1〜3人)

採用の優先順位:

  1. テックリード(または強めのシニアエンジニア): 技術的な意思決定をリードできる人

  2. ミドルエンジニア: テックリードの方針のもとで実装を推進できる人

  3. ジュニアまたは社内転換人材: 戦力化まで時間がかかるため、メンタリング体制が整ってから

この段階のポイント:

  • 最初の1人目が最も重要。技術力だけでなく、非エンジニアとのコミュニケーション能力を重視する

  • エンジニアの採用・評価に関する意思決定を、人事だけでなくエンジニア自身にも委ねる

  • 小さくても成果を出せるプロジェクトを用意し、エンジニアチームの社内プレゼンスを高める

フェーズ2: DX拡大期(エンジニア4〜10人)

採用の優先順位:

  1. 専門職種の追加(インフラ、データ、セキュリティなど)

  2. EM(エンジニアリングマネージャー)の採用または社内登用

  3. 採用担当にエンジニア経験者を配置する

この段階のポイント:

  • 開発チームの「型」を作る。スクラム運用、コードレビュー、デプロイフローなどのプロセスを標準化する

  • エンジニア評価制度を正式に導入する

  • テックブログやイベント登壇など、技術ブランディングを本格化する

フェーズ3: DX成熟期(エンジニア10人以上)

採用の優先順位:

  1. VPoE / CTO相当のポジション(まだいない場合)

  2. 新卒エンジニア採用の開始

  3. グローバル人材の採用検討

この段階のポイント:

  • 組織設計(チーム分割、責任範囲の明確化)が採用より重要になる

  • 内部昇進とキャリアパスの多様化で定着率を維持する

  • 「非IT企業のDX部門」から「テック企業の事業会社」へのブランド転換を図る

8. 非IT企業のエンジニア採用でよくある失敗パターンと対策

失敗1: 「社内SE」として募集してしまう

問題点: 「社内SE」という肩書きは、エンジニアにとって「ベンダー管理・ヘルプデスク・Excel業務」のイメージが強く、応募意欲を下げる。

対策: 職種名は「DXエンジニア」「バックエンドエンジニア」「プラットフォームエンジニア」など、具体的な技術領域を示すタイトルにする。業務内容も「内製開発」「技術選定」「アーキテクチャ設計」など、エンジニアリング業務であることを明確にする。

失敗2: 年収を「社内公平性」で抑えてしまう

問題点: 「他の部署と同じ給与テーブルだから」という理由で、エンジニアの市場価値に見合わない年収を提示してしまう。

対策: エンジニア専用の報酬テーブルを設計する。社内の他職種と完全に同一のテーブルである必要はない。市場相場を踏まえた年収レンジを設定し、候補者に透明に提示する。経営層への説明は「採用できなければDXが進まないコスト」として整理する。

失敗3: 「何でもできる人」を求めてしまう

問題点: 「フロントもバックもインフラもできて、しかもマネジメントもできる人」を1人で探してしまう。そんな人はいない(いてもIT企業で年収1,500万円以上)。

対策: 必要なスキルを分解し、複数人で分担する前提で要件を設計する。最初の1人には「コアとなる技術力」+「コミュニケーション能力」の2軸で絞る。

失敗4: 技術面接なしで採用してしまう

問題点: 人事面接だけで技術力を評価せずに採用し、入社後にスキルミスマッチが発覚する。

対策: 社内にエンジニアがいない場合でも、外部のエンジニア(技術顧問・業務委託)に面接に参加してもらう。技術力の評価は必ず技術者が行う。

失敗5: 入社後に放置してしまう

問題点: 「エンジニアなんだから自分でなんとかするだろう」と放置し、孤立させてしまう。

対策: 90日オンボーディングプランを必ず用意する。特に最初の2週間は、経営層・事業部門との接点を意図的に作る。「何を期待しているか」「どう評価するか」を明文化して共有する。

FAQ(よくある質問)

Q. 非IT企業がエンジニアを採用するのにどれくらいの期間がかかりますか?

A. 一般的に、非IT企業のエンジニア採用は求人開始から内定承諾まで2〜4か月程度かかることが多いです。特に1人目のエンジニア採用は長期化しやすく、6か月以上かかるケースも珍しくありません。採用チャネルの複数活用(スカウト + エージェント + リファラル)と、選考フローの短縮が期間圧縮のポイントです。

Q. エンジニアの年収はどの程度に設定すべきですか?

A. IT企業の市場相場を参考に設定することを推奨します。バックエンドエンジニアのミドルクラス(経験3〜5年)であれば、2026年時点で500万〜750万円程度が目安です。シニアクラスやテックリードであれば700万〜1,000万円以上が必要になるケースもあります。年収だけでなく、裁量・技術選定の自由度・キャリア成長の機会をセットで提示することで、年収だけの比較から脱却できます。

Q. 社内にエンジニアが1人もいない場合、まず何から始めるべきですか?

A. まず技術顧問を業務委託で確保することを推奨します。月20〜40時間程度の稼働で、DXロードマップの策定・技術選定・採用面接への同席などをサポートしてもらいます。技術顧問がいれば、求人票の作成や選考プロセスの設計も適切に行えるため、その後の正社員エンジニア採用の成功確率が大幅に上がります。

Q. 業務委託エンジニアと正社員エンジニア、どちらを先に確保すべきですか?

A. 正社員採用を進めつつ、並行して業務委託エンジニアに参画してもらうのがベストです。正社員採用には時間がかかるため、その間のDXプロジェクトの推進力を業務委託で確保します。業務委託エンジニアとの協業を通じて、自社に合うエンジニア像が明確になるというメリットもあります。業務委託から正社員に転換する「トライハイヤー」モデルも有効な選択肢です。

Q. SIerやベンダーへの外注と内製化、どちらがよいですか?

A. DXの中核となる部分は内製化を目指すべきです。外注はプロジェクト単位では効率的ですが、長期的にはベンダーロックイン・ナレッジの流出・変更対応のスピード低下といったリスクがあります。一方で、すべてを最初から内製化する必要はありません。「コア領域は内製、周辺領域は外注」と切り分け、段階的に内製化の範囲を広げていくのが現実的な戦略です。

Q. 非IT企業でテックブログを始める意味はありますか?

A. あります。むしろ非IT企業のテックブログは希少性が高く、エンジニアの注目を集めやすいのが利点です。「製造業のDX」「物流の最適化」「金融システムのモダナイゼーション」といったテーマは、IT企業のテックブログにはない独自性があります。月1〜2本の更新頻度でも継続することが重要で、採用候補者が「この会社の技術チームはどんな仕事をしているか」を具体的にイメージできるようになります。

Q. エンジニアの評価制度はどう設計すべきですか?

A. 他職種と同じ評価制度をそのまま適用するのは避けましょう。エンジニア専用の評価軸(技術力・設計力・コードレビュー・障害対応・技術的意思決定など)を設け、技術スペシャリストとマネジメントの両方のキャリアパスを用意することが望ましいです。評価制度の設計段階からエンジニア本人を巻き込むことで、納得感のある制度になります。

Project Completed

まとめ

非IT企業のエンジニア採用は確かに難易度が高い。IT企業と比べて技術ブランドの蓄積がなく、年収レンジでも不利に見えがちです。

しかし、本記事で解説してきた通り、非IT企業には非IT企業ならではの強みがあります。

  • 事業インパクトの大きさ: 自分の仕事が事業全体を変える実感

  • 裁量の広さ: 技術選定からアーキテクチャ設計まで、自分で決められる

  • ドメイン知識の希少価値: 「技術 × 業界知識」の掛け合わせが市場での強みになる

  • ゼロイチの面白さ: 技術組織を自分の手で立ち上げるやりがい

これらの強みを正しく言語化し、適切なチャネルで届け、入社後も約束通りの環境を提供する。そのための具体的な施策を、フェーズごとに実行していくことが成功への道筋です。

techcellarでは、非IT企業のエンジニア採用を支援しています。 求人票の設計からスカウト文面の作成、選考フローの設計、技術面接のサポートまで、エンジニア目線での採用支援が可能です。

「DXを進めたいが、エンジニアが採れない」とお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。

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