公開: 2026/6/7
フリーランスエンジニア活用ガイド|業務委託契約の実践と法対応
フリーランスエンジニアを即戦力として活用するための契約設計・単価相場・法的リスク回避の実践手法
フリーランスエンジニア活用ガイド|業務委託契約の実践と法対応
フリーランスエンジニアを業務委託で採用すれば、正社員採用が難航する中でも即戦力を素早く確保できる。ただし契約設計を誤ると偽装請負として法的リスクを負うため、正しい運用の型を押さえることが必須だ。
「エンジニアの正社員採用が全然決まらない。でも開発は待てない」——こういう状況に置かれたスタートアップの採用担当者・経営者は多い。そんなときに現実的な選択肢となるのが、フリーランスエンジニアの業務委託採用だ。
しかし実態は複雑で、「とりあえず契約してみた」という進め方では失敗する。2024年11月にはフリーランス新法が施行され、発注企業側の義務が大幅に増えた。 法的要件をクリアしながら、エンジニアとのWin-Winな関係を築く方法を、採用実務の現場から解説する。
このページでわかること:
フリーランスエンジニア採用が正社員採用と何が違うのか
2026年の単価相場と職種別コスト感
業務委託契約で必ず押さえるべき法的ポイント(フリーランス新法対応)
偽装請負を避けるための具体的な運用ルール
フリーランスをチームに統合して成果を出すマネジメント手法
業務委託から正社員転換までのパス設計
TL;DR(要点まとめ)
フリーランスエンジニアの2026年平均月単価は約80万円。AI活用スキルがあると+10万円の差
2024年11月施行のフリーランス新法により、発注企業は取引条件の書面明示・60日以内支払い等が義務化
偽装請負の最大リスクは「指揮命令」。作業指示ではなく「成果物」で依頼することが原則
フリーランス採用に向いているのは「プロジェクト型」「専門スキル特化」「スピード重視」の案件
試し採用(まず業務委託→正社員転換)は双方のミスマッチリスクを下げる有力な手法
主要なフリーランスエンジニアの採用チャネルは、エージェント・直接契約・副業マッチングの3経路
1. なぜ今、フリーランスエンジニア採用が注目されているのか
フリーランスエンジニアへの需要は構造的に増加している。その背景を3つの視点から整理する。
1-1. エンジニア不足と即戦力ニーズの高まり
経済産業省が2019年に発表した試算によると、IT人材の需要と供給のギャップは2030年に最大約79万人に拡大すると推計されている(経済産業省「IT人材需給に関する調査」)。正社員での採用は採用期間が長く(平均2〜4ヶ月)、候補者の選択肢も多いため、特にスタートアップにとって競争は厳しい。エンジニア採用が難しい構造的な理由については「エンジニア採用が難しい7つの理由」でも詳しく解説している。
フリーランス採用の最大のメリットはスピードだ。エージェント経由なら最短2週間、スキルが明確なエンジニアであれば即日稼働も現実的だ。
1-2. 働き方の多様化と「複業」エンジニアの増加
フリーランス・副業エンジニアを選ぶ側の動機も変わってきた。「プロとして複数の企業と仕事したい」「特定の会社に縛られたくない」という価値観が広がり、腕のあるエンジニアがあえてフリーランスを選ぶケースが増えている。
ファインディ株式会社の2026年の調査によると、フリーランスエンジニアのAI活用率は増加傾向にあり、生成AIを活用しているエンジニアとそうでないエンジニアの月単価には約10万円の差がある(ファインディ株式会社プレスリリース、2026年)。つまり、フリーランス市場には高スキルなエンジニアが集まりやすい構造がある。
1-3. フリーランス新法の施行で制度が整備された
2024年11月にフリーランス・事業者間取引適正化等法(通称:フリーランス新法)が施行された。これにより、発注者側(企業)の義務が明確化され、適切な契約管理のルールが整備された。法整備が進んだことで、フリーランスを「使い捨て」にするリスクが制度的に減り、むしろ中長期的な関係構築がしやすくなっている。
2. フリーランスエンジニアの2026年単価相場
コストを正しく見積もるために、最新の単価相場を把握しておく必要がある。
2-1. 職種別・スキル別の月額単価目安
職種 | 月額単価の目安 |
AIエンジニア・MLエンジニア | 90〜150万円 |
バックエンドエンジニア(5年以上) | 80〜120万円 |
フロントエンドエンジニア(5年以上) | 70〜100万円 |
インフラ・SREエンジニア | 80〜130万円 |
モバイルエンジニア(iOS/Android) | 70〜100万円 |
ジュニアエンジニア(3年未満) | 50〜70万円 |
(参考:フリーランスコンシェルジュ「2026年最新版フリーランスエンジニアの単価相場」)
2-2. 正社員と比較したコストの現実
「フリーランスは単価が高い」という印象を持つ人も多いが、実態はそう単純ではない。
正社員の実質コストを計算すると:
月給30万円の正社員の場合、社会保険料(会社負担分)が月約4.5万円追加
年間換算で給与30万円×12ヶ月+社保約54万円=実質414万円
さらに採用コスト(エージェントフィー等)が年収の30〜35%かかるケースも
月単価80万円のフリーランスは年間960万円と高く見えるが、必要な期間・スキルに絞って活用すれば、ピンポイントで即戦力を確保しながら採用コストを最適化できる。
2-3. 単価交渉の現実的な進め方
採用実務を支援してきた経験から言えるのは、単価交渉は「時間×稼働率」より「成果物で合意する」方がトラブルが少ないということだ。
稼働時間より成果物で定義する: 「週3日稼働で月50万」より「APIのv2移行を3ヶ月で完了、月80万」の方が双方のミスマッチが起きにくい
レート変更のタイミングを明示する: 6ヶ月後の見直し条件を初回契約に盛り込む
交通費・機材費の扱いを明確にする: 常駐の場合は特に重要
3. フリーランス新法(2024年11月施行)の企業側対応ポイント
2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法は、フリーランスへの業務委託を行う企業に具体的な義務を課している。主要なポイントを整理する。
3-1. 必ず対応すべき5つの義務
フリーランスを活用するすべての企業が対応すべき義務は以下の通りだ:
取引条件の書面明示: 業務委託時に「業務内容」「報酬額」「支払期日」等を書面またはメールで明示する義務がある(口頭での合意は不可)
60日以内の報酬支払い: フリーランスが成果物を納品した日から60日以内に報酬を支払わなければならない
募集情報の的確な表示: 案件の公募時に虚偽・誇大な情報を掲載してはならない
ハラスメント対応体制の整備: フリーランスに対するハラスメントを防止する体制を構築する義務がある
継続契約の解除予告: 6ヶ月以上の継続的な業務委託を解除する場合は、30日前までに予告し理由を開示する必要がある
3-2. 違反した場合のリスク
違反申告があった場合、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省が調査に着手し、指導・勧告(公表)・命令(公表)へとエスカレートする。発注企業にとっては、法令違反の公表によるブランドへのダメージが最大のリスクだ。
対応策として、フリーランスとの契約は必ず書面化し、支払いサイクルを自動化するシステムを導入することを強く推奨する。
4. 偽装請負を避けるための実務ルール
フリーランスとの業務委託で最も注意すべきリスクが「偽装請負」だ。契約上は請負・業務委託でも、実態が雇用と判断されると、労働者派遣法違反として最大懲役3年・罰金300万円の罰則を受けるリスクがある。
4-1. 偽装請負と判断される3つの典型パターン
偽装請負と判断されやすいのは以下の3パターンだ:
指揮命令の存在: 「毎朝10時にSlackでスタンドアップに参加してください」「このタスクを今日中に終わらせてください」といった、業務の進め方への具体的な指示・命令がある状態
時間・場所の拘束: 始業・終業時刻の一方的な指定、特定の場所での勤務を義務付ける行為
代替不可の扱い: 「あなた本人でなければ困る」という属人的な扱い。適法な請負であれば、誰が担当するかはフリーランス側が決める
4-2. 適法に運用するための具体的なチェックリスト
適法な業務委託を維持するために、以下を定期的にチェックすることを勧める:
依頼は「作業指示」ではなく「成果物・仕様」で行っているか
勤怠管理(出退勤時刻の記録)を発注企業側が行っていないか
Slackのチャンネルで、フリーランスへの直接的な業務命令が飛んでいないか
フリーランスが「別の人に担当を代えてもよいか」を尋ねられる状況か
契約書に「指揮命令権は受託者に帰属する」旨が明記されているか
採用実務を支援してきた経験から言えば、**「どうやるか(How)は任せ、何を達成するか(What)だけを合意する」**という姿勢がトラブルを防ぐ最も有効な方法だ。プロとして成果を出すことを前提に、プロセスに干渉しないことが信頼関係の基盤になる。
5. フリーランスエンジニアの採用チャネルと選び方
フリーランスエンジニアを探す主なチャネルは3つある。それぞれの特徴と使い分けを解説する。
5-1. エージェント経由(フリーランスエージェント)
向いているケース: スペックが明確、急ぎで戦力が必要、スクリーニングを外部に任せたい
主要なフリーランスエンジニアエージェントには、レバテックフリーランス、Findy Freelance、ランサーズテックエージェント、IT pro Partners等がある。エージェントのマージンは一般的に案件単価の20〜30%程度が多い。
強み: プレスクリーニング済みで質が担保されやすく、スピーディに候補者を紹介してもらえる
弱み: エージェントマージンがコストに上乗せされる。エンジニアへの実単価が低くなるため、ハイスキル人材が集まりにくいケースもある
5-2. 副業マッチングプラットフォーム
向いているケース: コストを抑えたい、週1〜2日の少ない稼働で大丈夫、試し採用として活用したい
Workship、YOUTRUST、Offers等の副業マッチングサービスは、本業を持ちながら副業をしているエンジニアとのマッチングに強い。稼働時間が少ない分、単価も抑えやすい。
特にYOUTRUSTは「信頼の連鎖」でつながるSNS型サービスのため、素性が確認しやすく、カルチャーフィットを重視する場合に有効だ。詳しい活用方法は「YOUTRUSTエンジニア採用完全ガイド」を参照してほしい。
5-3. 直接契約・リファラル経由
向いているケース: 長期的な関係構築を重視、エージェントコストをかけたくない、特定のスキルを持つ人を知っている
社内エンジニアのネットワーク、勉強会・コミュニティ、GitHubのOSSコントリビューター等からの直接アプローチ。エージェントマージンが不要で、信頼関係を事前に築けるメリットがある。
選考設計が不明確なまま直接契約すると後でトラブルになりやすいため、スコープ(やること・やらないこと)を明確にした上で短期の試し案件からスタートすることを強く勧める。
6. フリーランスエンジニアをチームに統合するマネジメント
採用して終わりではなく、チームに溶け込ませて成果を出してもらうための設計が重要だ。
6-1. オンボーディングの設計
フリーランスは「社員ではない」という意識が強い分、初動の環境整備がないと孤立しやすい。以下の3点を初週に揃えることを勧める:
コンテキスト共有: プロダクトのビジョン、技術的背景、現在の課題を1時間で伝える資料(社員向けと同じ資料で構わない)
コミュニケーション設計: どのSlackチャンネルに参加するか、誰に質問すればよいか、レポーティングのサイクル(週次など)を明示する
成果物の定義: 最初の2週間で何を完成させるかを具体的にチケットに落とす
6-2. コミュニティとの関係性を保つ
フリーランスエンジニアは「複数社と仕事している」という立場から、情報の扱いに敏感だ。NDA(秘密保持契約)の締結は必須だが、あわせて「社内情報をどこまで共有するか」のルールを明示しておくことで、双方の不安を減らせる。
6-3. フィードバックサイクルの設計
成果のフィードバックは「成果物単位」ではなく、定期的なレビューサイクルで行うことを勧める。具体的には月次または隔週でのレビューMTGを設けて、方向性のずれを早期に修正する。
採用実務を支援してきた経験では、フリーランスとのトラブルの大半は「期待値の齟齬」から発生している。契約時に期待値を文書化し、定期的に確認することがリスクヘッジになる。
7. 業務委託から正社員への転換戦略
フリーランスを「試し採用のパス」として使うことは、双方のリスクを下げる有効な戦略だ。
7-1. 「業務委託→正社員転換」モデルのメリット
ミスマッチリスクの低下: 実際に一緒に働いてからスキル・カルチャーフィットを確認できる
オンボーディングコストの削減: 正社員として入社するときには既に業務に慣れているため、即戦力化が早い
候補者側の安心感: いきなり転職するよりリスクが低いため、転職に踏み出しにくいエンジニアにもアプローチしやすい
スタートアップの採用支援をしていると、「最初は業務委託で入ってもらったエンジニアが、1年後に正社員になってくれた」というケースは珍しくない。特に転職を積極的に考えていないエンジニアへのアプローチ手法として有効だ。
7-2. 転換オファーのタイミングと設計
転換を検討するタイミングとして適切なのは、業務委託開始から3〜6ヶ月後が一般的だ。以下の5つのステップで進めることを勧める:
関係性を見極める: 業務の品質、チームとのフィット感、長期的なモチベーションを評価する
本人の意向を確認する: 正社員化に関心があるかをカジュアルに確認する(急がない)
処遇を設計する: 業務委託での単価と正社員の年収・待遇を比較して、本人にとって損にならない提案を設計する
役割を明確化する: 正社員としての役割・キャリアパスを具体化する
転換のタイミングを合意する: 業務委託契約終了と正社員入社のスケジュールを合意する
8. フリーランス採用に向いているケースと向いていないケース
フリーランスが最適な選択肢にならないケースもある。状況に応じた判断基準を整理する。
8-1. フリーランス採用が向いている5つのケース
プロジェクト型の開発: 新機能開発・システム移行・リプレースなど、期間と成果物が明確なプロジェクト
特定スキルの補強: 社内に足りない特定技術(ML・セキュリティ・モバイル等)をピンポイントで補強したい
採用前の検証: 本当に必要なポジションか確認したい場合、まず業務委託で試す
繁忙期対応: 特定時期にリソースが集中するプロダクト開発フェーズ
コスト最適化: 正社員採用のコストと時間をかけられない初期フェーズのスタートアップ
8-2. フリーランス採用が向かない3つのケース
コアメンバーが必要な場合: 中長期でプロダクトを共に作るコアエンジニアは、フリーランスより正社員の方が適している
高い機密性が求められる場合: 事業の根幹となる機密情報に深く触れる業務は、正社員で抱えた方がリスクが低い
チームカルチャーの形成が重要な場合: 組織文化を一緒に作り上げるフェーズには、フリーランスより正社員が向いている
9. 業務委託契約書の実践ポイントと雛形チェックリスト
フリーランスエンジニアとの業務委託契約書は、後々のトラブルを防ぐための最重要ドキュメントだ。「サービス名で検索して見つけた雛形をそのまま使う」というアプローチでは、エンジニア採用に特有のリスクをカバーできない。
9-1. 契約書に盛り込むべき必須項目10選
フリーランスエンジニアとの業務委託契約書に盛り込むべき項目は以下の通りだ:
業務内容・成果物の定義: 「Webアプリケーションの開発」では曖昧すぎる。機能の仕様書・ドキュメントへの参照、完成の定義(DoD: Definition of Done)を明記する
報酬額と支払いサイクル: 月額・時間単価・成果物単位のいずれかを明確にし、支払期日をフリーランス新法に従い60日以内で設定する
契約期間と更新条件: 初回期間(例:3ヶ月)と更新の手続きを明記する。自動更新にする場合は条件を明示する
稼働時間・稼働率の定義: 「週3日稼働」の場合、「週3日分の成果物を納品する」という表現で、稼働そのものではなく成果物に紐づけること
秘密保持条項(NDA): 業務上知りえた情報の取り扱い、秘密情報の定義・管理方法・契約終了後の扱いを明記する
知的財産権の帰属: 開発した成果物の著作権が発注企業に帰属することを明示する(デフォルトではフリーランス側に帰属するため)
再委託の可否: フリーランスが第三者に作業を委託することを認めるか否かを明記する
成果物の瑕疵対応: 納品後に不具合が見つかった場合の対応期間・方法を定める
契約解除条件: 解除できる条件(重大な瑕疵・法令違反等)と通知期間を定める(フリーランス新法に従い、継続的業務委託の場合は30日前通知が義務)
準拠法・管轄裁判所: 日本法準拠・発注企業所在地の裁判所を管轄とすることを明記する
9-2. エンジニア採用特有のリスク条項
一般的な業務委託契約書の雛形には入っていないが、エンジニア採用では特に重要な条項が2つある。
コンフリクト・オブ・インタレスト(利益相反)条項: フリーランスが競合他社とも業務委託契約を持っている場合に、機密情報が競合に漏れるリスクがある。「競合する企業への業務委託を事前に通知する義務」を定めておくことで、発覚時の対応がしやすくなる。
AIツール・生成AI使用に関する条項: 2026年現在、フリーランスエンジニアの多くが生成AIを活用して開発を行っている。AIが生成したコードの著作権や、社内情報をAIツールに入力することの可否についても、契約書に明示しておくことを強く勧める。
10. フリーランスエンジニアの評価・スクリーニング方法
採用後に「こんなはずじゃなかった」とならないために、事前のスクリーニングが重要だ。エージェントを使う場合でも、最低限の見極めポイントを押さえておく。
10-1. スクリーニング面談で確認すべき5つのポイント
フリーランスエンジニアとの契約前のスクリーニング面談では、以下を確認することを勧める:
過去の類似プロジェクト経験: 「こういう要件の開発をやったことがあるか」を具体的に確認する。ポートフォリオやGitHubのコードを確認するのが最も確実だ
稼働可能時間と並行案件の状況: 「週何日稼働できるか」「他にいくつの案件を持っているか」を確認する。オーバーコミットしているフリーランスは品質とスピードの両方で問題が起きやすい
コミュニケーションスタイル: テキストコミュニケーション(Slack等)に慣れているか、非同期コミュニケーションを好むか同期コミュニケーションを好むかを確認する。リモートワーク前提の場合は特に重要だ
技術的な自律性: 「仕様が曖昧な場合はどうするか」を確認する。「質問する」「自分で判断して進める」のどちらが多いかは、マネジメントスタイルに大きく影響する
フリーランスとしての経験年数と実績: 初めてフリーランスになった人と、5年以上の実績がある人とでは、自律的な仕事の進め方に差がある
10-2. 試し案件(PoC)の設計
不安な場合は、本格的な契約の前に小さな試し案件(PoC:Proof of Concept)から始めることを勧める。
期間: 1〜2週間
スコープ: 本業務の一部、または類似タスク
報酬: 日単価または成果物単価で設定
評価観点: コードの品質・コミュニケーション・スピード・プロアクティブさ
試し案件は「採用面接の延長」として機能する。面接だけでは見えないエンジニアの実力を実務で確認できるため、ミスマッチリスクを大幅に下げられる。
11. フリーランスエンジニアとのトラブル事例と対策
業務委託でよくあるトラブルのパターンと、予防策を整理する。
11-1. 成果物の品質が期待と異なる
原因: 成果物の定義が曖昧なまま契約してしまったケースが多い。「動くコードを作ってもらった」が、テストが一切なく保守性が極めて低い、というのは典型的なケースだ。
予防策: 契約時に「完成の定義(DoD)」を具体的に定める。テストカバレッジ・コードレビューの有無・ドキュメントの要否まで明示することで、品質基準を合意できる。
11-2. 途中でフェードアウトしてしまう
原因: フリーランスがより条件の良い案件を見つけた、業務委託の契約が口頭のみで拘束力がなかった、などのケースがある。
予防策: 書面での契約と途中解除時の通知期間を明示する(最低2週間前通知を条件にするなど)。また、月次でのレビューMTGを定期化することで、問題の早期発見と関係性の維持に役立てる。
11-3. 請求額が合意と異なる
原因: 時間単価で契約した場合、稼働時間の申告が曖昧になるケースがある。「追加作業が発生したので追加請求する」という齟齬も多い。
予防策: 月額固定または成果物単位の契約にすることで、この問題を根本的に回避できる。時間単価の場合は、月次の稼働時間上限を合意しておくことが重要だ。
採用支援の経験から言えば、トラブルの9割は「合意事項が不明確なまま進めた」ことが原因だ。面倒でも、重要な事項はSlackのテキストで記録しておく習慣をつけることを勧める。
FAQ:フリーランスエンジニア採用でよくある疑問
Q. フリーランスエンジニアを採用する場合、どこから探せばいいですか? A. エージェント(レバテックフリーランス、Findy Freelance等)・副業マッチング(Workship、YOUTRUST等)・直接リファラルの3経路が主流。まずはエージェントで質の担保されたエンジニアにアクセスし、慣れてきたら副業マッチングやリファラルを組み合わせるのがおすすめだ。
Q. フリーランス新法への対応が漏れるとどうなりますか? A. 公正取引委員会・厚生労働省等から指導・勧告を受け、内容が公表される。企業ブランドへのダメージが大きいため、まずは取引条件の書面明示と60日以内支払いの2点を確実に対応することを優先してほしい。
Q. フリーランスエンジニアとの契約書は何を盛り込むべきですか? A. 最低限必要な項目は、①業務内容・成果物の定義、②報酬額と支払いサイクル、③契約期間と更新条件、④秘密保持(NDA)条項、⑤知的財産権の帰属(発注者に帰属することを明示)の5点だ。
Q. フリーランスに直接指示を出しても大丈夫ですか? A. 成果物のフィードバック・方向性の確認は問題ない。NG なのは、「今日中に終わらせてください」「毎朝この時間に作業してください」のような作業時間・方法への具体的な命令だ。「成果物をこの仕様で」と依頼するスタイルを徹底する。
Q. 業務委託から正社員に転換するときの注意点は? A. 双方の合意なしに「正社員にする」とは言わないこと。まず本人の意向を確認し、処遇設計を透明に行うことが信頼関係の基盤になる。業務委託での単価より大幅に年収が下がる提案は候補者に不利感を与えるため、相場を踏まえた設計が必要だ。
Q. フリーランスエンジニアの稼働管理はどうすればいいですか? A. 勤怠管理(出退勤時刻の記録)は偽装請負のリスクがあるため、発注企業側が行うべきではない。代わりに成果物の定期的なレビューと、週次の進捗共有(テキストレポート等)で管理する方法が適法かつ実用的だ。
Q. フリーランスエンジニアと正社員が混在するチームはうまくいきますか? A. うまくいくかどうかは設計次第だ。重要なのは、フリーランスが「どこまで関与するか」のスコープを明確にして、正社員と情報格差が生まれないようにすること。情報共有の過不足が混在チームのトラブルの元凶になりやすい。
Q. フリーランスエンジニアへの報酬が高くて予算オーバーになります。どうすれば? A. 稼働時間・日数を絞る(週5→週3等)、副業マッチングで単価の低い段階のエンジニアを探す、プロジェクトのスコープを絞る、の3つが主な対応策だ。「フル稼働のフリーランス」ではなく「週2日の副業エンジニア」は単価が半分以下になるケースもある。
まとめ:フリーランス採用を戦略的に活用する
フリーランスエンジニアの業務委託採用は、正社員採用が難航するスタートアップにとって現実的かつ即効性の高い手段だ。ただし、法的リスクの回避(フリーランス新法対応・偽装請負防止)と、適切なマネジメント設計なしには機能しない。
重要なのは「フリーランスを補完的に使う」という思考ではなく、「フリーランスも含めたチーム設計」という視点だ。正社員とフリーランスをそれぞれの強みで組み合わせることで、採用コストを最適化しながら開発力を高められる。
まずは以下の3ステップから始めてみてほしい:
現在の開発課題を整理し、「フリーランスに向いているプロジェクト」を特定する
エージェントまたは副業マッチングサービスで候補者を探す
業務委託契約書のテンプレートを整備し、フリーランス新法に準拠した運用フローを作る
techcellarでは、フリーランスエンジニアの採用戦略設計から契約フローの整備、チームへの統合まで一気通貫でサポートしている。まずはLPページ(https://www.techcellar.jp/lp/primary)から詳細をご確認いただきたい。
フリーランスとの業務委託が軌道に乗ったら、次のステップとして正社員採用も並行して進めることを勧める。スカウトサービスの選び方については「エンジニアに聞いたスカウトサービス比較7選」を参考にしてほしい。また、ひとり人事や少人数チームでエンジニア採用を回す際のノウハウは「ひとり人事のエンジニア採用完全ガイド」でまとめている。
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現役エンジニアでありながら、スタートアップのエンジニア採用支援を行う。採用コンサル営業として採用を売る側の経験と、エンジニアとして採用される側の経験を併せ持つ。13以上のダイレクトスカウトサービスの運用経験をもとに、AI×採用の実践ノウハウを発信。
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