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Tips エンジニア採用のヒント

公開: 2026/6/5|更新: 2026/9/25

フリーランス新法対応エンジニア採用ガイド|業務委託7つの義務と罰則

フリーランス新法の7義務と罰則を採用担当視点で解説。勧告事例と契約・スカウトのチェックリスト付き

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フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、エンジニアに業務委託で仕事を発注する企業に、取引条件の明示・60日以内の報酬支払・禁止行為の遵守など7つの義務を課す法律で、2024年11月1日に施行されました。副業の会社員エンジニアに個人で発注する場合も対象になり、違反すると公正取引委員会・厚生労働省による指導・勧告・公表、命令違反には50万円以下の罰金があります。

TL;DR(この記事の要約)

  • フリーランス新法は2024年11月1日施行。従業員を使用しない個人・一人法人のエンジニアへの業務委託が対象

  • 取引条件の明示は発注者全員の義務。報酬の60日以内支払・ハラスメント対策などは従業員を使用する発注者(ほぼすべての企業)の義務

  • 7つの禁止行為は1か月以上、育児・介護配慮と中途解除の30日前予告は6か月以上の業務委託で適用される

  • 2025年6月には出版2社に初の勧告が出され、2025年10月までに放送・広告業の128名が指導を受けるなど執行は本格化している

  • 採用側の実務ポイントは「契約書の見直し」「スカウト・募集文面の明示」「業務委託管理台帳の整備」の3点

  • 2026年1月からは取適法(改正下請法)も施行され、両法の要件を同時に満たす運用が必要

1. フリーランス新法とは何か

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フリーランス新法は、個人で仕事を受けるフリーランスが発注企業と対等に取引できるよう、発注側に取引ルールと就業環境への配慮を義務付けた法律です。通称は「フリーランス・事業者間取引適正化等法」で、取引の適正化は公正取引委員会・中小企業庁、就業環境の整備は厚生労働省が所管します。

データで見る:フリーランス人口と法執行の現状

フリーランスとの取引は一部の企業だけの話ではなく、執行もすでに動き出しています。

  • 内閣官房「フリーランス実態調査」(2020年):日本のフリーランス人口は約462万人(本業214万人・副業248万人)と試算

  • 公正取引委員会(2025年3月28日公表):ゲームソフトウェア業・アニメーション制作業などへの集中調査で、45名の事業者に是正を指導

  • 公正取引委員会(2025年6月17日):出版大手2社(小学館・光文社)に同法に基づく初の勧告。取引条件の明示義務違反と、期日における報酬支払義務違反が認定された

  • 公正取引委員会(2025年12月10日公表):放送業・広告業を中心に、2025年10月までに128名の事業者へ是正を指導

注目すべきは、集中調査の対象にゲームソフトウェア業が含まれていた点です。エンジニア・デザイナーへの業務委託が多い業界から調査が入っている以上、IT企業やスタートアップも「うちは対象外」とは言えません。ゲーム業界のエンジニア採用事情はゲームエンジニア採用ガイドで解説しています。

「フリーランス(特定受託事業者)」の定義

法律上のフリーランス(特定受託事業者)とは、従業員を使用しない個人事業主、または代表者1人だけで従業員を使用しない法人をいいます。ここでいう「従業員」は、週の所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる労働者を指します。エンジニア採用で該当しやすいのは次の3パターンです。

  1. 個人でシステム開発・保守の業務委託を受けるエンジニア

  2. 一人会社(株式会社・合同会社)を設立し、従業員ゼロで受注するエンジニア

  3. 副業として個人で開発業務を引き受ける会社員エンジニア(受け入れ企業側の副業ポリシー設計も併せて整えたい)

従業員を雇用している受注者は対象外です。この点は誤解されやすいので注意しましょう。正社員・業務委託・SESの使い分けに悩む場合はエンジニア契約形態比較ガイドも参照してください。

発注者側の2つの区分

発注企業側は2つに区分され、どちらに当たるかで負う義務の範囲が変わります。

  1. 業務委託事業者: フリーランスに業務委託するすべての事業者(発注者自身がフリーランスの場合も含む)。取引条件の明示義務が課される

  2. 特定業務委託事業者: 従業員を使用する、または役員が2人以上いる発注者。明示義務に加えて残り6つの義務が課される

社員を1人でも雇っている企業は特定業務委託事業者に当たるため、スタートアップや中小企業も含め、ほぼすべての採用企業が7つの義務すべての対象になり得ます。

2. 発注者に課される7つの義務

フリーランス新法の核心は、発注者が果たすべき7つの義務です。義務ごとに適用される発注者の範囲と契約期間の条件が異なるため、「自社の案件にどれが適用されるか」を最初に整理することが対応の出発点になります。

義務1: 取引条件の明示(すべての発注者・全案件)

業務委託をしたら、直ちに取引条件を書面または電磁的方法(メール・チャットツールのメッセージ等)で明示しなければなりません。口頭のみの伝達は違反になります。

明示が必要な主な事項:

  1. 発注者・受注者の名称

  2. 業務委託をした日

  3. 給付・役務の内容

  4. 給付を受領する期日(役務の提供期日)

  5. 給付を受領する場所(役務の提供場所)

  6. 報酬の額と支払期日

  7. 検査をする場合は、検査完了日

  8. 現金以外の方法で支払う場合は、その支払方法に関する事項

実務ポイント: スカウト媒体のメッセージで業務内容と報酬額に合意した時点で、明示義務が発生し得ます。「まず稼働してもらって、契約書は後で送る」という進め方は違反になり得るため、合意と同時に条件をテキストで送る運用に切り替えましょう。

義務2: 60日以内の報酬支払(特定業務委託事業者)

報酬の支払期日は、成果物の受領日(役務の提供を受けた日)から60日以内のできる限り短い期間内で定める必要があります。元請から受けた仕事をフリーランスに再委託する場合は、一定の条件のもとで元委託の支払期日から30日以内とする特例があります。

実務ポイント: 月末締め翌月末払いは一般的に問題になりにくい一方、月末締め翌々月末払いは、月初に納品された成果物では60日を超えてしまいます。経理部門と支払いサイトを確認してください。

義務3: 7つの禁止行為(特定業務委託事業者・1か月以上の案件)

1か月以上の業務委託では、次の7つの行為が禁止されます。

  1. 受領拒否(正当な理由なく成果物の受け取りを拒む)

  2. 報酬の減額(発注後の一方的な値引き)

  3. 返品(正当な理由のない返品)

  4. 買いたたき(通常の対価より著しく低い報酬を不当に定める)

  5. 購入・利用強制(指定する物品・サービスの購入や利用の強制)

  6. 不当な経済上の利益の提供要請(協賛金や無償作業の要請など)

  7. 不当な給付内容の変更・やり直し(費用を負担せずに仕様変更ややり直しをさせる)

開発案件で典型的なのは、終盤での一方的な工数削減と「ちょっと追加でお願いできますか」という無償の追加作業です。報酬据え置きのスコープ追加は、7の不当な給付内容の変更に当たるおそれがあります。

義務4: 募集情報の的確表示(特定業務委託事業者)

広告・求人サイト・SNSなどで広くフリーランスを募集する場合、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示が禁止され、情報を正確かつ最新に保つ義務があります。対象となる募集情報には、業務の内容、従事する場所、報酬、募集者の名称・住所・連絡先などが含まれます。

実態とかけ離れた高額報酬の表示や、成果報酬であることを伏せた時給表示は誤解を生じさせる表示に当たるリスクがあります。募集を締め切った案件の掲載を放置しないことも重要です。

義務5: 育児・介護等への配慮(特定業務委託事業者・6か月以上は義務)

6か月以上の業務委託では、フリーランスから妊娠・出産・育児・介護についての申し出があった場合、状況に応じた必要な配慮をしなければなりません。6か月未満の業務委託でも努力義務があります。配慮の例は次のとおりです。

  1. 業務量や納期の調整

  2. 打ち合わせ時間帯の変更やオンライン対応

  3. 配慮が難しい場合の理由の説明

義務6: ハラスメント対策の体制整備(特定業務委託事業者・全案件)

契約期間にかかわらず、フリーランスへのハラスメントを防ぐ体制整備が義務付けられています。

  1. ハラスメント防止方針の明確化と社内への周知・啓発

  2. フリーランスからの相談に対応できる窓口の整備

  3. ハラスメント発生後の迅速・適切な対応

正社員向けの相談窓口を流用する場合は、業務委託のエンジニアも利用できると明示して周知することが必要です。

義務7: 中途解除等の事前予告・理由開示(特定業務委託事業者・6か月以上)

6か月以上の業務委託を中途解除する場合、または契約を更新しない場合は、原則として30日前までに予告しなければなりません。予告後にフリーランスから理由の開示を求められたら、原則として開示する必要があります。

長期プロジェクトで稼働中のエンジニアへの発注継続・終了は、プロジェクト側と人事・調達が連携して早めに決める体制が欠かせません。

7義務の適用区分まとめ

義務

対象の発注者

契約期間の条件

所管

1. 取引条件の明示

すべての発注者

なし

公取委・中企庁

2. 60日以内の報酬支払

特定業務委託事業者

なし

公取委・中企庁

3. 7つの禁止行為

特定業務委託事業者

1か月以上

公取委・中企庁

4. 募集情報の的確表示

特定業務委託事業者

なし

厚生労働省

5. 育児・介護等への配慮

特定業務委託事業者

6か月以上(未満は努力義務)

厚生労働省

6. ハラスメント対策

特定業務委託事業者

なし

厚生労働省

7. 中途解除の予告・理由開示

特定業務委託事業者

6か月以上

厚生労働省

エンジニアとの初回契約を検討する前に、この表で案件ごとの適用義務を確認しておくことを勧めます。

3. エンジニア採用実務への影響とチェックリスト

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採用担当者がまず手を付けるべきは、契約書・スカウト文面・業務委託管理台帳の3点です。フリーランス新法の違反は、悪意よりも「慣行のまま契約書やスカウト文面を使い続けていた」ことから起きるケースが大半だからです。

エンジニアの業務委託パターン別:適用される義務の早見表

エンジニア採用でよくある業務委託の形を、フリーランス新法の適用に当てはめると次のようになります(発注者が従業員を使用する企業である前提)。

パターン

典型例

主に適用される義務

スポットの副業依頼

2週間で管理画面の改修を依頼

取引条件の明示、60日以内支払、募集時の的確表示、ハラスメント対策

継続的な副業・業務委託

週1〜2日の開発支援を3か月

上記+7つの禁止行為

長期のフリーランス参画

1年間のプロジェクト参画

上記+育児・介護等の配慮、中途解除の30日前予告・理由開示

技術顧問・アドバイザー

月数回の設計レビューを6か月以上

長期参画と同じ。個人契約なら対象になる

開発会社・SES経由

従業員のいる会社と契約

受注者がフリーランスに当たらないため原則対象外(取適法の確認は必要)

注意したいのは、同じ人との契約でも更新によって期間が1か月・6か月の閾値を超えることです。3か月契約を2回更新すれば6か月以上の業務委託として扱われ得るため、更新のたびに適用義務を見直しましょう。技術顧問の契約設計は技術顧問の採用ガイド、SES出身者の正社員採用はSES出身エンジニア採用ガイドも参照してください。

契約書の見直しチェックリスト(10項目)

  1. 委託業務の内容が具体的に記載されているか

  2. 報酬額が明示されているか(単価×想定時間、または固定額)

  3. 支払期日が受領日から60日以内に設定されているか

  4. 検査をする場合、検査完了日が明示されているか

  5. 受領・納品の期日と場所(リモートの場合は納品方法)が明記されているか

  6. 仕様変更・追加作業時の報酬の扱いが定められているか

  7. 6か月以上の場合、中途解除・不更新の30日前予告の条項があるか

  8. 6か月以上の場合、育児・介護等の申し出への対応窓口が示されているか

  9. ハラスメント防止方針と相談窓口の適用対象に業務委託者が含まれているか

  10. 発注者・受注者の正式名称と連絡先が記載されているか

スカウト・募集文面の見直し

BizReach・Forkwell・Greenなど13以上のスカウトサービスを運用してきた立場から見ると、正社員採用の文面を流用して副業・業務委託の打診を送るケースは珍しくありません。業務委託の募集では、少なくとも次の5点を文面か案件ページで示しましょう。

  1. 会社の正式名称・所在地・連絡先

  2. 委託業務の概要(職種・技術スタック・成果物)

  3. 報酬の目安額または算定方法

  4. 業務開始予定時期と想定期間

  5. 想定稼働時間と従事場所(リモート可否)

「詳細はご面談で」だけの募集文面は、的確表示の観点でも候補者の信頼の観点でも不利です。文面の組み立て方はスカウトメールの書き方や求人票の書き方ガイド、副業人材の集め方はOffers活用ガイドも参考になります。

業務委託管理台帳の整備

法令違反を防ぐには、業務委託エンジニアを一元管理する台帳が有効です。記録すべき項目は次の6つです。

  1. 受注者の氏名・連絡先、個人事業主か一人法人か(従業員の有無)

  2. 契約開始日・終了日(または期間)と、1か月・6か月の閾値を超えるか

  3. 委託業務の内容と取引条件の明示日

  4. 報酬額・支払期日

  5. 6か月以上の案件:育児・介護等の申し出記録、中途解除予告の有無

  6. ハラスメント相談窓口の案内済みフラグ

月次でレビューし、「6か月を超えそうな案件」「支払期日が60日を超えている案件」を早期に検知できる体制を作りましょう。

4. 違反リスクと制裁の実態

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フリーランス新法の違反は、いきなり罰金ではなく、指導・勧告・公表・命令と段階的に措置が重くなります。ただし2025年には初の勧告と企業名の公表が実際に行われており、「指導で済む」と楽観できる段階は過ぎています。

制裁の種類とプロセス

  1. 報告徴収・立入検査: 違反の疑いがある発注者に報告を求め、必要に応じて立入検査を行う

  2. 指導・助言: まず是正を求める指導・助言が行われる

  3. 勧告: 違反が認められると是正の勧告が出される。勧告事例は公表されている

  4. 命令・公表: 勧告に従わない場合は命令が出され、その旨が公表される

  5. 罰金: 命令違反や検査拒否等には50万円以下の罰金(行為者と法人の両方が対象)

採用広報に力を入れている企業ほど、公表による信頼毀損のダメージは大きくなります。

よくある違反パターン4つ

パターン1: 口頭合意後に契約書を後送 スカウトで連絡し、メッセージで業務内容と報酬を話し合い「追って契約書を送ります」と進めるパターン。業務委託の時点で直ちに明示する義務があるため、合意と同時に条件をテキストで送る必要があります。

パターン2: 終盤のスコープ追加で報酬は据え置き リリース直前の追加機能開発を「今回は増額なしで」と依頼するパターン。1か月以上の案件では、不当な給付内容の変更や買いたたきに当たるおそれがあります。

パターン3: プロジェクト都合で突然の委託打ち切り 予算カットやピボットで、翌月から発注を止めるパターン。6か月以上の案件では30日前予告が必要です。

パターン4: 社員と同じ指揮命令で業務をさせる 業務委託なのに社内の上司が細かく指示し、勤務時間の報告を求めるパターン。実態として労働者性が高いと判断されれば、労働基準法や労働者派遣法の問題となり、そもそも雇用として扱うべきケースになります。

5. フリーランス採用の法的リスク管理フレームワーク

フリーランス採用のリスクは、「即時対応」「体制整備」「予防」の3段階に分けて優先順位を付けると、限られた工数でも対応を進められます。すべてを一度に整えようとすると、最も危険な契約書と支払いサイトの修正が後回しになりがちです。

リスクの3段階分類

レベル1: 即時対応が必要(違反リスク高)

  1. 取引条件を明示しないままの業務委託

  2. 受領日から60日を超える支払いサイト

  3. 一方的な報酬減額・無償の追加作業の要求

レベル2: 体制整備が必要(義務未対応)

  1. フリーランスが利用できるハラスメント相談窓口が未整備

  2. 6か月以上案件での育児・介護配慮の対応手順がない

  3. 中途解除予告・理由開示の社内ルールが存在しない

レベル3: 予防的対応(リスク軽減)

  1. 業務委託管理台帳の整備・月次レビュー

  2. 採用担当・エンジニアリングマネージャーへの研修

  3. 弁護士による契約書の定期的なレビュー

予算別の対応優先順位

月5万円以内(テンプレートの見直し中心):

  1. 取引条件明示に対応した契約書・発注書テンプレートの更新(専門家への相談含む)

  2. スカウト文面・募集ページへの必須情報の追加

  3. 経理部門と連携した支払いサイトの確認・修正

月5〜20万円(管理体制の整備まで):

  1. 上記に加え、業務委託管理台帳をスプレッドシートや管理ツールで整備

  2. 採用担当・PMへの研修の実施(半日程度)

  3. ハラスメント相談窓口の対象に業務委託者を追加して周知

月20万円以上(法務サポート付き体制):

  1. 上記に加え、法律事務所やリーガルテックツールとの契約

  2. 取引条件明示のシステム化(発注書の自動生成など)

  3. フリーランス向けの独立した相談窓口の設置

6. 2026年以降の規制動向

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2026年はフリーランス新法の執行が続くことに加え、取適法(改正下請法)が施行され、業務委託取引のルールが二重に強化された年です。両法は対象が一部重なるため、どちらか一方だけを見た対応では不十分です。

取適法(改正下請法)との関係

2026年1月1日、下請法が改正され「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(中小受託取引適正化法、通称:取適法)として施行されました。エンジニア採用に関係するポイントは次の3つです。

  1. 従来の資本金基準に加えて**従業員数の基準(取引類型により300人・100人)**が追加され、対象となる発注者が広がった

  2. 受注者が個人の場合も対象になり得るため、同じ業務委託がフリーランス新法と取適法の両方の対象になるケースがある

  3. 法人化したエンジニアや小規模な開発会社への発注でも、発注者側の規模によっては取適法の義務が生じる

外注先の規模や契約形態が多様な開発組織ほど、発注の都度「どの法律の対象か」を判定する仕組みが必要です。海外委託を含む開発体制の設計はオフショア・ニアショア活用ガイドも参照してください。

公正取引委員会の執行強化

公正取引委員会は「フリーランス法特設サイト」で周知と申告受付を進め、業種を絞った集中調査と指導を続けています。2025年の勧告・指導事例を見ると、違反の中心は取引条件の明示と期日における報酬支払という基本的な義務です。スタートアップでも「知らなかった」では済まない環境になっています。

海外の動向:EUプラットフォーム労働指令

EUでは2024年にプラットフォーム労働指令が採択され、加盟国は2026年12月までに国内法化することが求められています。デジタルプラットフォームを介して働く人について、労働者性の推定を強める内容です。

日本でも業務委託の実態が雇用に近いケースへの目は厳しくなっています。「業務委託か雇用か」の線引きは慎重に行い、実態が雇用に近い場合は雇用契約への切り替えを検討するのが安全です。

7. エンジニア業務委託を上手に活用するために

フリーランス新法は業務委託を規制する法律ではなく、適正な業務委託を促す法律です。法令を正しく守ったうえで業務委託を活用することが、優秀なフリーランスエンジニアからの信頼獲得につながります。

「契約条件が最初から明確」「支払いが確実」「相談窓口がある」という評判は、エンジニアコミュニティで共有されやすい情報です。業務委託エンジニアの探し方やマネジメントの全体像は副業・業務委託エンジニア活用ガイドで詳しく解説しています。

業務委託エンジニアを長期的なパートナーにする3つの視点

  1. 透明性の確保: 業務内容・報酬・期間を最初に明示し、後から一方的に変えない。取引条件の明示義務は、その実践を仕組みとして求めるものでもある

  2. 公正な報酬設計: 同種の業務の相場を確認して報酬を決める。相場を大きく下回る「友人価格」での発注は買いたたきのリスクになる。職種・言語別の年収水準はエンジニア年収相場データ2026が参考になる

  3. 継続的なキャリア配慮: 6か月以上稼働するエンジニアには技術的な成長機会を提供し、正社員転換を打診する場合も本人の意思を尊重する

FAQ(よくある質問)

Q1. 副業エンジニアと業務委託エンジニアは同じ扱いですか?

本業が会社員でも、個人として業務委託を受け、従業員を使用していなければ「特定受託事業者(フリーランス)」に該当します。副業エンジニアへの発注にも、取引条件の明示や報酬の支払期日の義務が適用されます。

Q2. 業務委託から正社員への転換を打診した場合、法律上の問題はありますか?

打診自体は問題ありません。ただし、転換に応じないことを理由に報酬を減額したり、6か月以上の契約を予告なく打ち切ったりすると違反になるおそれがあります。本人の意思を尊重した形で打診しましょう。

Q3. 1か月未満の短期案件でも義務はありますか?

あります。取引条件の明示と60日以内の報酬支払は、契約期間の長短に関わらず適用されます。7つの禁止行為は1か月以上、育児・介護配慮(義務)と中途解除の予告は6か月以上の案件が対象です。

Q4. スカウトのメッセージだけで業務委託の合意をしてしまいました。遡って対応できますか?

速やかに、取引条件をまとめた書面やメールを送付して明示してください。明示は業務委託をした時点で直ちに行うのが原則なので、今後は合意と同時に条件をテキストで送る運用に改めましょう。進行中の案件は、次回更新時に契約書を正式に見直すのが有効です。

Q5. フリーランス新法に対応した契約書のひな形はありますか?

公正取引委員会の「フリーランス法特設サイト」や厚生労働省のページで、法律の解説資料やQ&A、取引条件明示の記載例などが公開されています。自社の案件に合わせたカスタマイズは弁護士に相談するのが安全です。

Q6. 育児・介護等への配慮義務では、実際に何をすればよいですか?

申し出があった際に、内容を把握し、取り得る選択肢を検討して、配慮を実施するか、難しい場合はその理由を説明します。業務量や納期の調整、打ち合わせ時間帯の変更などが代表例です。対応手順を担当者間で共有しておきましょう。

Q7. 違反した場合、どのような罰則がありますか?

まず指導・助言や勧告が行われ、勧告に従わない場合は命令と公表の対象になります。命令違反や検査拒否等には50万円以下の罰金が科され、行為者と法人の両方が処罰対象です。2025年には勧告を受けた企業名が実際に公表されています。

Q8. 業務委託エンジニアから報酬の支払いが遅いと言われました。どう対応すればよいですか?

まず支払いサイトを確認し、受領日から60日を超えていれば即座に修正が必要です。定めた支払期日に支払わないこと自体が義務違反になります。エンジニアに謝罪し、次回以降の支払期日を書面で確約しましょう。

まとめ・次のアクション

フリーランス新法は2024年11月1日に施行され、エンジニアを業務委託で活用する企業には直接関係する法律です。2025年以降は勧告・指導の実例も積み上がっており、2026年からは取適法も加わりました。

今すぐ取り組むべき3つのアクション:

  1. 既存の業務委託契約書を見直す: 明示事項がそろっているか、支払期日が受領日から60日以内かをまず確認する

  2. スカウト・募集文面に必須情報を追加する: 会社の正式名称・所在地・連絡先、業務内容・報酬目安・期間を明記する

  3. 業務委託管理台帳を作成する: 稼働中・検討中の案件を一覧化し、1か月・6か月の閾値を超える案件の追加義務を確認する

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参考情報:

  • 公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」: https://www.jftc.go.jp/freelancelaw_2025/

  • 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」

  • 公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律に基づく指導について」(2025年3月28日、2025年12月10日)

  • 内閣官房「フリーランス実態調査結果」(2020年)

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岩佐 直樹techcellar 運営者

現役エンジニアでありながら、スタートアップのエンジニア採用支援を行う。採用コンサル営業として採用を売る側の経験と、エンジニアとして採用される側の経験を併せ持つ。13以上のダイレクトスカウトサービスの運用経験をもとに、AI×採用の実践ノウハウを発信。

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